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産休のお知らせ

気がつくと最後のブログ更新から2か月もたってしまい、大変失礼しました。ご無沙汰しています。

【産休のお知らせ】

 私事ながら、8月20日に第3子を出産予定です。誠に勝手ながら7月9日~10月15日の約3か月間、産休にてお休みを頂きます。かかりつけの患者様とご家族にはご迷惑をおかけし、大変恐縮です。

 当院に通院されている方については、受診された際に外来に出ている医師が不在時の診察・定期処方を担当させて頂きます。認知症外来フォローの方については、落ち着いており前回と同様の処方でよい場合はどの医師にかかって頂いても結構です。認知症に関する内服薬の調整や相談がある場合には、火~金曜日の午後に出ている山本由布医師の診察を受けて頂ければ対応可能です。

 大変申し訳ございませんが、不在時の新規のもの忘れ外来はお休みとさせて頂きます。10月以降のご予約は受け付けております。お電話を頂いた順にリストアップさせて頂き、復帰の日程が確実となり次第、こちらからご連絡をさせて頂き受診日を確定させて頂きます。ご不便をおかけしますが、どうぞよろしくお願い致します。
 ただ「暴れていて大変!一刻も早く何とかしてほしい!」というせっぱつまった状況の方については、通常外来で可能な限り対応します。まずはお電話でご相談下さい。
# by kasama-hospital | 2014-05-27 03:29 | 今日の出来事

つまりはフェルガード…だったのか?

またまたご無沙汰しています。ようやく春の足音が聞こえてきましたね。大好きな春です。

 久しぶりに症例のご紹介をしてみます。

80歳代前半の男性が、かかりつけの先生からの紹介状持参で受診されました。予約でのもの忘れ外来受診を待てないほど切羽つまった様子でした。数か月前から体の動きが悪く転ぶことが多くなり、顔面を打撲したり腕の骨を骨折するようになったとのことです。幻視(実際にはない物が見えること)もあります。一方で座らず立ったままで食事をするほど落ち着きがなく、不眠で一晩に20回以上トイレに行くなどの症状もありました。紹介元の医療機関からは、リフレックスという抗うつ薬やドグマチールという抗精神薬が処方されていました。

外来での診察所見と暮らしぶりを聞き、LPC(レビー・ピック複合)と診断しました。最近このタイプの認知症はとても多いです。ピックの荒ぶる陽性症状とレビーの傾眠(ウトウト寝てしまう)に代表される陰性症状が入り混じり、治療に苦慮することが多いのがこのタイプです。

前回の記事で入院の適応について触れ、私の失敗例もお示ししましたが、何を隠そうそのモデルがこの方です。自宅が自営業で繁忙シーズンなのに患者さんに振り回され家族が疲れ切っているということもあり、入院で内服調整しようと思ってしまったのです。外来では一応こちらの話に頷いていましたが、病棟に上がってからはソワソワと落ち着かなくなり、最終的には

「なんでこんな仕打ちを受けなくちゃならんのだ!訴えてやる!!!」

となってしまい、入院同日のお帰りとなった訳です。お迎えにこられた息子さんとお話をし、
ウィンタミン量の自宅で調節(家庭天秤法)をお願いし、フェルガード100Mの内服もお勧め、脊柱管狭窄症由来の足のしびれにはリリカを処方しました。

 退院翌日、ケアマネージャーさんから電話があり、ウトウト寝ていて歩けないとの報告を
受けました。家庭天秤法に従ってウィンタミンを減らすように指示をし、自宅で様子を見ることとなりました。

 2週間後、こちらの気がかりを裏切るようにご家族がニコニコして報告して下さいしまた。

「ずいぶんいいです。歩いています。」

ウィンタミンは1包まで減らして様子を見たものの、最低量でもフラフラしてしまうとのことで、結果的にウィンタミンは使えなかったようです。本来なら危機一髪…。でもずいぶんいいってどういうこと?!

その後自分の目で本人を診察し、納得せざるを得ませんでした。本当に調子がいいのです。診察室でニコニコ穏やかに笑っており、デイサービスは楽しいから毎日でも行きたいと言うのです。家族の話では傾眠も見られなくなり、転倒もしなくなったとのこと。

 ご家族に喜んで頂き結果オーライではあるものの、正直いまいち釈然とせず、いい方向に向かった理由を自分なりに考えてみました。

・パーキンソニズム(歩行障害)を悪化させるドグマチールと、認知機能を低下させる可能性がある抗うつ薬を中止したこと
・フェルガード100Mを開始したこと
・リリカを開始ししびれが和らいだこと(以前はシーツのしわに触れてもビリビリ痛み、夜眠れなかったそうです)

 今回は引き算と、ほんの少しの足し算ですね。困ったら家族に聞けという教え通り家族の方にも聞いてみたところ、やはりフェルガード100M(米ぬかの成分フェルラ酸とガーデンアンゼリカというハーブの配合サプリメント)が効いたのでは…と言います。

 外来で穏やかな笑顔を見せる患者さんを拝見し、改めてフェルガードの威力を感じました。ご家族も以前よりは介護負担が減り、仕事として栽培されている果物も、無事出荷することが出来ました。その果物を購入した看護師さんのお陰で、ナースステーションは果実の甘~い香りに包まれました。

 さて、春と言えば出発の季節。春から入園の息子のために、私も慣れないミシンと格闘し袋物をこしらえました。近くで見るとありゃ…という出来栄えですが、私の実力120%です。息子に負けないよう、私も頑張って新しいスタートを切りたいと思います。
つまりはフェルガード…だったのか?_e0320283_7425720.jpg

# by kasama-hospital | 2014-03-29 07:42 | 認知症・介護

認知症と入院

 当院は多くはないものの入院病床を持っています。入院ができるということを、認知症診療においてどのように有効活用できるか?これは今後の課題の一つです。メリットは、昼夜症状を見守りこまめな薬剤調整が出来ること、陽性症状で疲弊しきったご家族にほんの少し休んで頂けること。デメリットは言うまでもなく「環境がガラリと変わること」です。慣れ親しんだ自宅から離れること事態が、患者さんを落ち着かなくさせてしまうことは、残念ながら事実です。このあたりを十分理解できていなかった私は、家族からのSOSに対しコウノメソッドがあるさと自信ありげに入院をお受けして、数名で痛い目に遭いました。

圧倒的な失敗パターンは、体がピンピンして自覚的な身体症状に乏しい時に、認知症の症状コントロールのみを目的に入院して頂いた時。陽性症状を制御しきれず数日で、下手をすると入院したその日の午後に退院にならざるを得ないという残念な結果に。本人は病識もなく、自覚的には痛くもかゆくもないのですから、自分がなぜこんないきなり場所にいて、自宅のように自由に動き回れないのか納得がいかないのも当然ですね。うちの病院の看護師さんはかなり我慢強く対応してくれますが、怒って抑制薬を飲むどころの騒ぎではなかったり、激昂した状態で飲んでも焼け石に水で効果に乏しかったり。そうこうしているうちに呼び出されて付き添うこととなったご家族が「いいです。もう家に連れて帰ります。」という展開に。本当に面目ない。

一方肺炎や尿路感染、脱水などで体が弱っている時は、

「このままじゃご飯も食べられないし、少し入院していきましょうか?」

という外来での声かけに、コクンと頷いて頂けることが多く、一応「合意の上の入院」ということになり、しめしめ…です。スタート地点からして違うのです。2階に上がると多少は落ち着かなくなることもありますが、なにぶん数日は体が弱っているので上の例ほど過激にならない印象が。脱水や感染症が落ち着く頃には、それなりに病院の環境に慣れていることが多く、‘ついでに’認知症の評価や薬の調整をしやすい。ご家族にも「肺炎で入院させたのに穏やかにしてもらった」と+αで評価して頂けることが多く、お得感があり。こんな言い方は失礼かもしれませんが、『弱った時が介入しどき』というのが現時点での私の結論です。そのようなチャンスが訪れない時は、できるだけ外来で頑張るのがお互いのためかもしれません。

 当院では入院中の患者さんにも『家庭天秤法』(病棟天秤法?)を適応し、処方した抑制薬が弱すぎて興奮が強ければ抑制薬を増量し、効き過ぎて昼間からウトウトしているようであれば減量する…という調整を行える体制を取っています。自宅でウィンタミンを使って穏やかに過ごされていた方が、誤嚥性肺炎で休薬した途端に「このデレ助!」「ブス!」「うるさいんだよ!」とバラエティ豊かに悪態をつくようになったり、午前中はその辺りに唾を吐いていた方が、ウィンタミンを飲んだ午後はケアにも抵抗せず穏やかだったなどの変化を目の当たりにした看護師さんがしみじみ

「先生、抑制薬って本当に人格を変えるんですね…。」

ナースステーションでこのつぶやきを聞いた私は、こうやってスタッフの認知症症状や薬剤に対する知識が深まるということも、入院治療がもたらす副次効果なのだな…と実感しました。

 さて、今日も一日頑張りましょう。皆様もよい一日をお過ごし下さい。
# by kasama-hospital | 2014-02-19 07:06 | 認知症・介護

近況報告

ずいぶんとご無沙汰してしまいました。今日は簡単に、当院の近況報告のみ。

★もの忘れ外来の予約待ち期間が、短縮しました

 茨城新聞の威力は予想以上で、直後から予約の電話が殺到してあっと言う間に初診が7月中旬まで埋まってしまいました。何か月も待つ余裕がない方のことを考え、急遽2月と3月の木曜日をもの忘れ外来に当てることにしました。これでほとんどの方が遅くても4月までに外来を受けられる状況となっています。
4月以降については、これまでの水曜日午後に加えて、金曜日午後ももの忘れ外来を行うことが出来そうです。やりたいことをやらせてくれる病院の柔軟な対応に感謝。そして枠を広げる以上、きちんと地域での広報活動も継続し、困った方を救うセーフティネットの機能を果たさなくてはいけないと自分に言い聞かせています。
診療時間そのもののスピードアップという面ではもう少し工夫が必要で、こちらも同時進行で頑張ります。(河野先生の外来見学を切望しています…) 

★グルタチオン点滴が使えるようになりました

 河野先生のブログで紹介されているグルタチオン点滴(パーキンソン病・レビー小体型・LPCなどで歩行改善効果が期待できると言われている薬)が、2月10日から当院でも使えるようになりました。劇的に歩行が改善する方がいるとのことで、それを目の当たりに出来る貴重な瞬間を心待ちにしています。改善例はブログで随時ご報告させて頂きます。

 改善例もたまってきているので、またぼちぼちアップさせて頂きます。
皆さん、インフルエンザが流行っていますので、お気を付け下さい。(私も先日インフルエンザAを発症して、一家全滅しました・・)
# by kasama-hospital | 2014-02-13 17:55 | 認知症・介護

家庭天秤法に救われました…

 先日初めて‘コウノメソッド卒業患者さん’が誕生しました。短期間ながら色々と学ぶところがあったため、経過を振り返ってみます。

 他院から転院となった80歳台の女性。3年前から近所の人に性格変化を指摘されるほど物の言い方がきつく、攻撃的な言動が目立つようになる。2年前には孫の顔がわからなくなり、通販で健康食品や補整下着などの高額な買い物をするなど浪費が目立つように。そして昨年10月下旬に突然外出したまま帰宅せず、一山越えた場所で警察に発見され総合病院に救急搬送されました。創傷治療が一段落したところで、介護環境を整える目的で当院に転院となったのです。

 診察時は愛想がよく協力的、歩行はスムーズで歯車様固縮なし。長谷川式は14点、遅延再生0/6、野菜の繰り返しあり、時計の数字が逆回転。アルツハイマースコア5点(迷子・遅延再生・繰り返し・時計の全体偏位・逆回転)ピックスコア3点(委縮の左右差、ピック切痕)、レビースコア2点(日中の嗜眠・幻視)スコアだけを見るとアルツハイマーになりますし、態度もにこやかで一見礼節が保たれていますが、家族の話では自分の味方だと思うと愛想がいいが自分に批判的だと思うと突然豹変するとのこと。また山を一つ越えるという行動の激しさはアルツハイマーの近所の慣れた道で迷うというイメージとは異なり、浪費のエピソードと共にピック的。CT所見もそれを裏付けます。ミニLPCと診断しました。

 いずれにせよ、この方で最も大切なのは陽性症状のコントロール。ウィンタミン計8mg(4mgを朝夕)を先に開始し、状態が落ち着いていることを確認した上で1週間後にリバスタッチパッチ4.5mgを追加しました。(リバスタッチパッチには弱興奮作用があるため)パッチ開始後にやや落ち着かない感じとなり、最終的にはウィンタミン18mg(6mgを食後3回)で退院し、施設入所となりました。入院中はフェルガード100Mも併用していましたが、退院と同時に家族の希望で中止となっています。

 問題は退院後です。退院後3週間の外来で、紹介状に「2回も施設を抜け出して施設近辺で発見された」と書いてあり、青ざめました。そのためでしょう、施設ではウィンタミンが計37.5mg(12.5mg錠剤を食後3回)まで増量され、数日後に傾眠・ふらつきが出現。ウィンタミンを25mgまで減らすも食事が取れないほどの傾眠とのことで、処方の調整を目的に私の外来を受診されました。数日前から、施設医師によってリバスタッチパッチがドネペジル塩酸塩5mgに変更されていました。

 まずは陽性症状が制御できない状態で退院としてしまったことをお詫びした上で、紹介状のお返事で次のようにお願いしました。

1つ目は、ドネペジル塩酸塩5mgはレビーに対して歩行障害出現、ピック病に対して前頭葉ストレッサーとして働くリスクが高いため、中核症状改善薬はリバスタッチパッチ、もしくはレミニールを使って頂きたいこと。

2つ目は、施設で家庭天秤法を適応して頂けないかとのお願いです。眠気・ふらつきを起こさず、かつ穏やかでいられる至適量は、現場で本人を見ているスタッフや医師にしかわかりません。大人数を預かる施設ではそのような対応は難しいのかな…と思いながらも、せめて数日単位でもよいので調整して頂けないかお願いしたところ、ご家族の話ではそのように対応して頂けたようです。結果的にはウィンタミン18mg(6mg包毎食後)で落ち着きを取り戻し、その後は出て行くこともなくなった(施設という環境に慣れたというのも一因だと思います)とのことで、私もひとまず安堵しました。中核症状改善薬については施設ではレミニールなら処方可能とのことで、途中からレミニール4mgに変更されました。ナウゼリンを先行させたため、心配していた嘔気も出現していないと施設の看護師さんより報告がありました。

 そして先日、ご本人と家族が外来を受診されました。穏やかに笑顔を見せ、かつ自分の足でしっかり診察室に入ってくる姿を見て、本当にホッとしました。施設では毎日‘スタッフの作業のお手伝い’をしているとご本人がお話してくれました。家族の方も納得されたため、処方は施設担当医にお願いすることとなり、当院通院は一度終了となりました。(当院通院は、処方が『老人保健施設の他科受診』に該当してしまい、本人の経済的負担が大きくなってしまうため)

 このケースでの反省と教訓です。施設入所を控え、入院中にリバスタッチパッチの導入をしてその様子を見守りたいという気持ちがあったせいか、パッチ導入が早すぎたのかもしれません。フェルガード100Mが入所時から中止になっていたことも一因?本人にとっては当院入院から施設入所という環境の変化がストレスとなり、余計に落ち着かなくなってしまった可能性があります。ウィンタミンのみで退院とし、外来でリバスタッチパッチ導入した方が施設にご迷惑をかけずにすんだのでしょうか。

そして今回改めて、抑制薬を適宜調整する『家庭天秤法』の素晴らしさを実感しました。素晴らしいと言うより、それなしで抑制薬を処方する恐ろしさを知ったと言うべきか。施設でウィンタミン量をどんどん上げていき、傾眠やふらつきが出て食事を食べられなくなった段階で、もしウィンタミンがそのまま継続されていたら…と考えると、背筋が寒くなります。いわゆる『暴れていた患者さんが、静かになると同時に寝たきりになった』という事態になっていたことでしょう。柔軟に対応して下さった施設の先生や現場のスタッフの方々に心から感謝します。

 写真は、院内で調剤してもらったウィンタミン4mg包です。‘吹けば飛ぶ量’と河野先生がおっしゃるほどわずかな量ですが、この薬の効果は偉大。処方した翌月の外来での家族の笑顔を見ると、マジックパウダーと呼びたくなります。

家庭天秤法に救われました…_e0320283_15105320.jpg

# by kasama-hospital | 2014-01-21 15:11 | 認知症・介護

今日も張り切って診療中


by kasama-hospital

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