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待ち時間に対する取り組み(2)

気になるインタビューの結果ですが、うちの病院のいい所、選んでいる理由は「家が近い」という物理的な理由(笑)の他に「相談しやすい」「スタッフが親しみやすい」などのアクセスビリティ=精神的な敷居の低さが挙げられました。これは大変に光栄なこと♪ これからも、職員一同、ホスピタリティを持って診療にあたりたいと思います。  

 一方で多くの患者さんが改善して欲しい点として挙げられたことは、やはり待ち時間に関することでした。多くの方がうんざりしつつも待つことそのものは仕方がないと思っている、しかし、あとどのくらい待つのか(数分なのか30分なのか2時間なのか)の目安がなく漠然と待つことがストレスだと思っていることが分かりました。数分なら待つけれど、2時間かかるならちょっとそこまで他の用事をしてくることができるので、これはその通りですね。

 待っている患者さんどうしの不公平感もストレスの一つだということもインタビューから分かったことです。例えば、午前中の外来で診察券を出すことができる開始時刻が明確に決まっていないので、6時半などのうんと早い時間に次々と家族が診察券だけ出して(順番を取って)帰ってしまう。他の方が8時に来ると廊下は誰もいないので自分が1番だと思っていたら、いざ外来が始まってみると、さっきはいなかった人が後から後から現れては自分より先に呼ばれて診察を受けてしまう。自分には先に診察券を出してくれる家族がいないので、これは不公平だと言うのです。高齢の家族を長いこと待たせたくないから順番を取っておいてあげたいというご家族の気持ちもよ~くわかるので難しいところですが、あまりにも早い時間に順番とりが行われるようなシステムは、やはり問題がありそうです。これについては、診察券を出すことが出来る時間を明確にし、その時間をなるべく遅めの時間にずらすという解決策が取れるように思います。診察券を出す時間にはズラリと列ができてしまうかもしれませんが、少なくてもあの時はいなかったのにいつの間にか順番を取られていた…という不公平感はないかもしれません。

 また、待ち時間の目安についても、自分はだいたい何番目なのか患者さんが把握できる方法について…検討中です。総合病院では電光掲示板などで表示されていますが、かなり大がかりな設備になってしまうので、まずはリストに名前を書いて頂いて消していったり、通し番号が書かれたカードを配ったりという原始的な方法を考えています。一日も早く導入できるとよいのですが、いましばらくお待ち下さい。

 医療スタッフと学生さんと患者さん、お互いのコミュニケーションが、少しでもよい診療に結びついていけば素晴らしいですね。インタビューに答えて下さった患者さんとそのご家族の方々、本当にご協力をありがとうございました!
# by kasama-hospital | 2012-10-28 00:32 | 今日の出来事

またまたグラム染色

こんにちは!白土です。霜が降りて暖房が欠かせない季節となりましたね。すっかりレポートが遅くなってしまいましたが、11月12日土曜日、グラム染色講習第2回目が行われました。
 
…と他人事のように言っていますが、実際のところは、1回目の講習に感銘を受けた市立病院と県立中央病院のスタッフが、「もっと勉強したいです!」とお願いし、お忙しい相原先生に時間を作って頂いたのが実情です。今回のレクチャーの舞台は市立病院。うちの病院には対面顕微鏡(2人で同時に見ることが出来る顕微鏡です)はないため、相原先生自ら顕微鏡を持参して下さいました。(杉山様、本当にありがとうございました。)

 今回の参加者は5人と、前回のレクチャーより更にこじんまり。実際にスライドを見ながら、所見を取っていく流れを中心に教えて頂きました。

相原先生と私たち生徒の一人が同じスライドを見て、

先生「じゃ、次は何を見るんだっけ?」

生徒「好中球の数を…。」

先生「そうだね。この視野に好中球はいくつぐらいある?」

生徒「500くらい…でしょうか?」

先生「え!なんで??2500-2600くらいあるでしょう!!!」

生徒「はぁ…そう言われてみれば…。」

先生「じゃあ、次は強拡大ね。感染の原因菌の定義は?」

生徒「え~と…。」

先生「5秒ルールね!」

生徒「え!あ!好中球が集まる複数の視野において…うんと…」

先生「はい、5秒たった!」

…という風に、優しく(笑)教えて下さいます。かなか修行らしくなってきました。

5人が順番に顕微鏡を覗くので、反復が多くなり、しっかり定着するというメリットも。感染の原因菌の定義は、『好中球が集まる複数の視野において、同一形態の菌が3+以上見られた場合、その形態から推測される菌種に関わらず、原因菌と定義する』はい、ここテストに出ま~す。私も犬の散歩をしながらお経のようにブツブツくり返して、さすがに覚えました。

 今回学んだ大切なことのもう一つ。『目の前のものをありのままに、素直に読む』ということ。グラム染色については知識も経験も乏しいため、これが非常に難しいのですが。どうしても「間違っていたらどうしよう」という不安が拭いきれないのです。でも、相原先生いわく「そんなことは心配しなくていい!」のだそうです。それが一見臨床と矛盾している結果のように見えたとしても、目の前に見えている事実については、自信を持って報告をする。その矛盾(のように思えたこと)から新たな発見が生まれることがあると。う~ん、科学者の視点ですね。

 そうそう、相原先生と中央病院の技師さんとの会話は、時々私には高度過ぎて難しかったというのも本音です。それでも相原先生に、

「顕微鏡を覗くプロである技師にはこのレベルを求めます。医師はここまではいいでしょう。」

と言われると、なに~医師も技師も同じ人間だからやる気があれば何とかなるはずだ~頑張ってクリアしてやる!と思ってしまうから不思議ですね。

これには理由があり、当院の技師である岡安さんは、今の私にとって強力な学び仲間であることに間違いはないのですが、24時間一緒に働いてくれる訳ではないのです。先日の当直時、寝たきりの高齢患者さんが発熱で緊急入院となりました。時は深夜。これまでであれば、‘肺炎の疑い’ということで痰や血液の培養を提出し、抗生剤を開始しておしまいでした。しかし幸か不幸か(?!)グラム染色を学んでしまった私。ここで深夜だからとグラム染色をやらずにすませたら、あの学びは単なる自己満足になってしまう。

 面倒だな…と一瞬ためらった自分を恥じつつ、一人孤独にグラム染色をスタート。いつも岡安さんが仕切ってくれていたグラム染色ゆえ、検査室の扉を開けてアセトンアセトン…と準備するところから。慣れぬ手技ゆえに粘調の痰がスライドガラスからはみ出て慌てたり、検査時間は1時間を超え、ちっとも‘迅速検査’とは言えず。しかし口腔上皮と白血球と多種細菌が混然一体となった誤嚥所見が見られた時には、時間を忘れて感動しました。

 翌日岡安さんに「いや~昨日は大変だったよ。これからは深夜にも毎回岡安さん呼ぶから、一緒にやろうね!」と言ってみたところ、「着信拒否します。」と言われてしまいました。(当然)やはり技師さんに頼り切らず自ら手技に習熟しておかなければ…。

 今回の一連の勉強会を経て、グラム染色のレポート用紙も作成しました。ここに所見を書き込んでいけば、もれなく観察できる…はず。修行は、まだまだスタートしたばかりです。
                                        白土綾佳
またまたグラム染色_e0320283_0282293.jpg

# by kasama-hospital | 2011-11-24 00:26 | グラム染色

グラム染色修行(その1)

こんにちは。白土です。今日は、検査についてのお話です。

グラム染色、という検査があります。肺炎や尿路感染と言った感染症で、痰や尿を特殊な色素で染めることで、顕微鏡で原因となっている細菌を見つけるという手技です。

通常それらの検体は培養に出すのですが、結果が返ってくるのが早くて数日後と時間的な遅れが出てしまうこと、正確な病状を反映していない結果が返ってくることもあり、誤った治療に結びついてしまうこともあり、解釈には注意が必要です。青木眞先生の『レジデントのための感染症診療マニュアル』という教科書(この教科書を読んで感染症に進みたいという若手医師がいるほど影響力の大きな良書です)にも、『可能な限り自分で染色し自分で顕鏡する』と書かれ、その重要性が強調されています。

グラム染色には、大型の機械などの高価な設備や多くのマンパワーは必要としません。低コストで一人でもできるという意味では、うちのような小さな病院でもすぐにでも始められます。顕微鏡と染色液、スキルと知識があれば…。そう、このスキルと知識が最大の問題。

ちなみに総合病院などのある程度の大きさの病院となると、専門の検査技師さんがいて、グラム染色をオーダーすると電話で結果を教えてくれます。大きな病院にいた頃の私は、技師さんが教えてくれる結果をふんふんと聞いて

「グラム陽性球菌がメインで白血球貪食像も見られる…。そうですか。ありがとうございます!」

と分かったような気になってやり過ごしていたのです。本当はこれでは全然わかっていないのですが。

うちの病院にも皮膚科の先生が使われるため顕微鏡はありますが、つい数か月前までグラム染色は行っていませんでした。
ぜひうちの病院でもグラム染色を!と一念発起して院長の許可を頂いたものの、何から始めればよいのかさっっぱり。まずは物品でも揃えてみようと、インターネットで必要な物をリストアップして、検査技師の岡安さんに注文してもらいました。昔々に試みたことがはあるようで(数回でやらなくなったと聞いております)棚の奥に古い染色液が残っていましたが、期限はとっくに切れていました。数週間後に(なぜか結構時間がかかった)ようやく物品が揃い、やはりネットで引っ張ってきた手順に従い、岡安さんと恐る恐るまずはトライ。

やっているうちに、どうやらこれ、学生時代にやったような…とおぼろげな記憶がよみがえってきました。岡安さんも「多分…私もやっています。」と。微生物などの実習でやっていない訳がないのです。非常に基本的かつ重要な手技ですから。にも関わらず、2人そろって具体的な内容をつゆほども覚えていないとは情けない…ダメ学生ですね。(指導して下さった先生方、ごめんなさい!)やはり目の前に患者さんがいて、明日の診療ですぐにでも使うぞ、という切迫した状況でないと、なかなか身に付かないと言うことでしょうか。

さて、栄えある1回目のトライは、懸念通り大失敗でした。手順通りやったのに、何にも見えてこない…。何がダメなのかもわかりません。検体が悪いのか、染色の手技が悪いのか、顕微鏡の扱いに問題があるのか、はたまた目と頭が悪いのか。う~ん…。早速行き詰ってしまいました。  (つづく)
# by kasama-hospital | 2011-10-16 00:36 | グラム染色

グラム染色修行(その2)

途方に暮れた私が泣きついた先は、研修医時代からお世話になっている、県立中央病院の臨床検査室です。お世話になっているとは言うものの、中央病院にいた当時はろくろく検査室に足を運んだこともなく、技師さんともほぼ初対面。単に病院そのものに馴染みがあるというだけで研修日に押しかけてしまったのです。技師さんだって普段の業務がお忙しいでしょうし、おまけに今や私は完全な部外者だと言うのに!中央病院の技師さんは、比較的業務が落ち着いている午後を指定され、後日数時間かけて丁寧に手技のレクチャーをして下さったのです。何て親切な方がいるものだと、大げさではなく胸が熱くなりました。
 技師の粟野さんと関さん(お2人ともチャーミングな女性です♪)は、内心あきれていたに違いありません。私の知識の乏しさに。

「あの…青が陽性でしたっけ?陰性でしたっけ?」(信号で青だから(+)と今は覚えました♪)

「顕微鏡は…レンズを最初に近づけて見ながら離していくんでしたっけ?」

レクチャーを乞うのが失礼なほど素人くさい質問を終始連発してしまいましたが、粟野さんは笑うことも怒ることもなく、優しく答えて下さり、一緒に染色もやらせて下さいました。

お陰で、うちの病院の顕微鏡は今コンデンサが下がっているのではないか(皮膚科の先生が使われている場合、下がっていることが多い)、そして1000倍の強拡大には油浸レンズが必要だという衝撃の事実(!)も判明し、どうやらその2つが敗因ではないかと明らかになったのです。いやもう、そんなことも知らないで始めようとしていたのか、と赤面ものですが(今日ここに記事を載せて更に恥の上塗り)聞くは一時の恥です。

 そして意気揚々と病院に戻って油浸レンズを待つことウン週間(何でこんなに時間がかかるんだ…)待望の油浸レンズが到着。コンデンサもばっちり上げて、セカンドトライ。染色で待つ時間ももどかしく、見てみると…見えた~~!!!県立中央病院検査室様様です。

 これにすっかり気をよくして、うちの病院ではグラム染色が本格的にスタートしました。院内で勉強会も開かれ、自分なりに教科書を読んで、ばっちり♪かと思いきや、なんだか痒い所に手が届かない…。
いや、すっきりとクリアな時もあるのです。臨床的な背景と目の前の細菌が矛盾なくかみ合い、岡安さんと「今日はうまく行ったね!」と言い合える時、抗生剤開始数日後の染色で白血球も細菌も見られなくなって、確かに効いているという実感を持てる時も。ただ、細菌感染が疑われるのに菌が認められないこと、白血球はワサワサいるのに菌がいない…ということもあって、解釈がうまく出来ないことも。教科書な知識と現場をつなぐ、もう少し実践的なレクチャーが欲しい…。
# by kasama-hospital | 2011-10-16 00:35 | グラム染色

グラム染色修行 (その3)

そんな時なのです。中央病院の技師、関さんが10月14日の夕方にグラム染色の講演があるからと声をかけて下さったのは。まさに神の思し召し!絶対に出席しますとお返事。

関さんからは、その翌日(土曜日)の日中にも同じ先生が実践で教えて下さるとお誘いを頂き非常に心ひかれたのですが、さすがに2日連続は…。14日にも疲れ切った夫に夕方の子守をお願いするので、翌日まで子守を押し付けるのは忍びないと、こちらは事前にお断りしていました。

14日当日、AIORCOID代表 相原雅典先生の講演を受け、目からうろこがボロボロぼろぼろ。
相原先生は、冒頭から、よくあるグラム染色レポート(GPC2+…と形態と数を羅列しているレポート)を
「臨床医の知りたいことに全く答えていない!」

とバッサリ切り捨て。私、ここで完全に引き込まれました。あのレポートを見てさっぱりピンとこなかったのは、私の知識不足だとばかり思っていましたが(それは大いにありますが…)それだけじゃなかったんだ! そして痰を水道水で洗うということにも衝撃!スライドを見るポイントなどもクリアカットで、今までの自分のグラム染色の見方(細菌はどこだ細菌…とひたすら細菌を探す)が180度変わりました。加えて、先生の感染症にかける情熱というのが言葉のはしばしからビンビンと伝わってきて、その姿勢にも感動…。

翌日の実践編、出ないでは修行が完成しない…。という訳で、夫にひたすらお願い。
「え~!翌日は出ないからって言ってなかった?」
と不機嫌そうだった夫も、最終的には
「勉強したい時が一番吸収できる時だからね。行ってきなよ。」
と言ってくれ、めでたく2日目にも出席。旦那さん、ありがとう…。10月の週末はずっと子守します。

 2日目も、本当に楽しくて楽しくて。痰を洗う手技、ハッカー法での染色などを実際に教えて頂きやってみました。技師さんも入れて10人ほどのこじんまりとした集まりだったので、途中でバンバン質問も出来て、大満足です。最後は出来上がったスライドを見ながらお話。
研修医の先生が自分の患者さんの痰を持参して、ノーヒントで先生が見ます。

先生「慢性の気道炎症があって…好中球と好酸球が9:1くらいで好酸球がちょっと目立つから、アレルギーの要素もある。最近が膨化してるから抗生剤が使われてた。細菌は…グラム陰性菌がいる。緑膿菌かな?」

後からどんな患者さんか聞くと、先天性の疾患があって気道感染をくり返しており、何回か緑膿菌も出ている、抗生剤も数日前まで使っていたが、薬疹(アレルギー)でやめた、とのこと。ゾゾッとしました。あたり過ぎて、怖い。切れ者の検事が現場検証を行って犯人を絞り込んでいく様子そのもの。たった一枚のスライドで、これだけ多くのことがわかるのか、と鳥肌が立ちます。グラム染色、恐るべし。匠の技に少しでも近づけるように、明日から頑張ろう、と知識と元気を頂いた2日間でした。

 感動しすぎでボーっとしてしまい、歩いて家まで帰ってしまい、夫に
「車どうしたの?」
と聞かれて初めて車で行っていたことに気が付くというボケっぷり。
県中の技師さん方、先生、本当に本当にありがとうございました!
# by kasama-hospital | 2011-10-16 00:34 | グラム染色

今日も張り切って診療中


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