レビー小体型で2例目の著効例!

今日は訪問診療を行っているレビー小体型の著効例をご報告します。

80歳台の男性。5年前に振戦・夜中の大声の寝言・意識消失があり別の医師によってレビー小体型と診断されています。長谷川式は26点でした。中核薬はずっと入っていません。ドプス・セルシンを使ってめまいで歩けなくなった既往あり。3年前から嗜眠、小刻み歩行、嚥下障害が出現。昨年には長谷川式が10点まで落ち、ドプスからネオドパゾールに変更されています。2回意識障害で総合病院に救急搬送されるも、器質的異常なく「脱水」と診断されていました。

 1年前に私が訪問診療の担当になりましたが、「よく転び、よく寝ている」状態をそのままに診ていた(いや、診ていなかったか)ことを自戒を込めてここに告白します。ただただ前医の処方を継続していたのです。訪問する度に、ベッドの上で猫のように体を丸め、起き上がった姿を見たことがありませんでした。全く動かないので冬は指の先まで冷え切って暗紫色になっていて、まさしく冬眠しているようでした。質問すると目をつぶったまま面倒くさそうに一言二言。

 6月の訪問時にご家族が「段々バカになる。」と言ったとカルテに記載あります。このころ遅ればせながらコウノメソッドによる患者さんの見直しを開始。6月中旬にセルシン2T2×を徐々に減らして中止。これだけで家族が「ずいぶん目が覚めた。」と言った時には、これまでの自分の怠慢を悔やみました。7月中旬にニコリン注射1回目、サアミオンを開始。河野先生に相談の上、ネオドパはレビー小体型に相性が悪いとのことでメネシットを院内採用して切り替え。そして8月中旬にイクセロンパッチ4.5mgを開始しました。

 そしてつい先日の訪問で、嬉しい驚きが。私たちがお邪魔すると、座って待っていてくれている患者さんの姿が。目もしっかり開いて「昔は遊び人だったんだ。今は遊びにも行けないけど。」と言うなど、会話が普通に成り立ちます。歩いてもらうと膝が屈曲ぎみのパーキンソン歩行ですが、足取りはしっかりしていてご家族いわく「転ばなくなった」とのこと。更に嬉しいことに、最近は「相撲を見よう」とテレビをつけるように家族の方に頼んだり、自分から新聞を広げるようになったとのこと。レビー小体型で頭の中に霧がかかった状態から、霧がスーッとはれて集中力が増したのでしょうか。家族の方に「どの薬が一番効きましたか?」と聞くと「貼り薬が始まってから特にだね。今の薬とは相性がいいみたい。」と答えて下さいました。この日もニコリンを打ってきました。

 とにかく丁寧にやるべきことをやるだけですが、こんな風に著効する方がいるとますます頑張ろうと思います。レビー小体型は、治療によって運命が極端に左右されると言われる疾患と言われています。クスリのさじ加減によって、奇跡的な改善を見ることもある一方で、治療を間違えば死の淵まで追いつめられることもあると。この方は良い経過を辿りましたが、治療が間に合わなかったらと思うと…責任の重さを実感しました。

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さてさて、写真は日本内科学会のセルフ・トレーニング問題。内科認定医を更新するためには、一定の単位を取らなくてはいけません。日本全国の勉強会や学会に出て行っても単位は取れるのですが、小さい子がいるためそうそう家をあけられず。家にいて取れるものは家で。久しぶりのマークシート、幅広い科の問題に、国家試験を思い出しました。すっかり忘れていたまれな疾患を復習するよい機会になりました。
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# by kasama-hospital | 2013-09-15 04:42 | 認知症・介護

絵本立て

長男の誕生日に、絵本立てを贈りました。高知県のなかよしライブラリーという所で作られたものです。すべすべとした木の触感が非常に心地よく、檜のよい香りがフワッと広がって、大人への癒し効果も抜群です。

私自身読書が大好きなので、子供にも本を楽しんでほしいな…という願いを込めて。
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先週はプライベートでとても辛い別れがあり、正直今もしんどさを引きずっています。まっすぐ駆け抜けた個人の遺志を継ぐべく、頑張っていきます。

お仕事上では、

・グラム染色中級試験3回目のレポートを送りました。

 認知症にかかりっきりでこちらの勉強は完全に疎かです。慌てて『微生物検査アトラス』を追加購入してみましたが、試験前に慌てて買ってもね…。自分にとっては認知症と同じくらい重要な位置づけなので、今後は腰を据えて取り組みたいと思います。

・9月から『もの忘れ外来』を始めました。
 
 初心者の私には、混みあった通常の外来で初診患者さんを的確に診断し治療に結びつけることがなかなか難しく。まずは多少時間がかかっても、丁寧に話をお聞きし所見を取るという作業を積み重ねたいと思います。水曜日の午後、お一人30分を目安に予約枠を設定します。
 コウノメソッドに関わる諸々のエピソードも続々あり、アップしたくてうずうずしていますが、キャパシティオーバーで、頭の中でうまく整理できません。おいおいアップできればと思います。

 何かに力を入れると全力投球になりやすい自分の不器用さを日々痛いほど感じています。医療の中での分野ごとに力を入れるバランス、そして仕事と家庭のバランス、悩みはつきませんが、焦らず地道にやっていきます。
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# by kasama-hospital | 2013-09-09 07:06 | プライベート

目上の方への敬意

『認知症28の満足』を読んで、私が「この先生は本物だ!」と確信し感銘を受けた1番のポイントは、実は認知症の治療に関することではないのです。(治療の効果については凄すぎてすぐに信じられず、眉唾ではないかと少し疑っていたのはここだけの話。)

 先生は趣味がプラモデル作りなこともあり戦争の歴史に詳しく、そのことで戦争を経験されている高齢患者さんとよい関係を築かれるのが得意なのだそうです。出身地や生まれからその方の出撃した地域や部隊の名前を当てたり、翌診察日までにそのことについて調べておいて話が合うようにするという徹底ぶり。認知症の方は最近の記憶は抜け落ちていても、昔の記憶はよく保持されている方が多いし、若くして活躍した記憶は誇らしいものとして残っていることが多い。子供や孫世代も、臭い物にはフタで戦争の歴史に触れないので、そのことに関心を持って聞いてもらうことで「またあの先生の所になら行く」という患者さんが多いのだとか。認知症患者さんは有名なお偉い先生だとかそんなことはどうでもいいですし、野生の勘のような鋭さで「相手がどういう中身の人間か」を判断します。本能的に「敵」か「味方」か、好きか嫌いかを判断するのだそうです。(『痴呆老人」は何を見ているか』より)ごまかしが利かないという意味ではコワいですね。

 先日他界された患者さんで、若い頃に満州に行かれていた男性がいました。90歳を超えているのに筋骨隆々で勇ましく、素敵な方でした。訪問診療をしていたのですが、お宅にお邪魔する度に、満州でのお話をしてくれました。自分一人中国語が出来て現地の中国人と対等にやりあえたお蔭で命拾いした話とか、電信柱に「この男を見つけたら銃殺せよ」と指名手配された話など、手に汗握る物語の数々。実は入れ歯が合っていなくて少し滑舌が悪く、熱心に話して下さる話の内容が半分くらいしか理解できなかったのですが(笑)そのお陰か繰り返し聞いても聞き飽きた感じがせず、今日はここの部分がちょっと理解できたとジグソーパズルを埋めるような達成感もあり。毎回あまりにも一生懸命語って下さるので、同席する奥さんと娘さんは笑いをかみ殺していましたが。

 ちょうどその頃、満州からの引き揚げについて書かれた本『流れる星は生きている』を読んだばかりでその壮絶な様が少しは想像できました。目の前にいる患者さんは、それを実際に経験された方なのだ、こういう人たちが必死に生き抜いて命をつないでくれたからこそ今日の私たち日本人がいるのだと思うと、自然と頭が下がります。一緒に引き上げられた奥さんは、「思い出したくもないくらい大変だった」とおっしゃっていましたが、夫である患者さんは良い所しか覚えていないようです。こんな貴重なお話を直に聞けるなんて、役得だな…と思っていました。

 この方は訪問しているうちに悪性腫瘍の疑いが非常に強くなり、何度か精密検査を勧めましたが、病院も入院も大っ嫌いだときっぱりと拒否。緩和ケア一本で最期まで自宅で過ごされました。ご自宅で亡くなる数日前も、少し調子がよくなったとそれまで寝ていた布団から隣りのちゃぶ台がある部屋に移動され、少し息切れしながらいつもの武勇伝を聞かせて下さいました。命の残り火が少ないことはよくわかっていたので、この話を聞けるのも今回で終わりかな…と切ない気持ちを押し殺し拝聴。亡くなったのは2週間後の訪問日当日で、あと1軒でその患者さんのお宅に訪問、というタイミングでした。
 
 もう貴重なお話を聞くことは出来ないのだと思うと、一つの時代が去っていったことを寂しく感じましたが、後日娘さんと外来でお話するチャンスがあり、
「私たちはもう何回も聞いているからと、話をきちんと聞くことが全くなかったので、先生に話を聞いてもらうのを楽しみにして、毎回ちゃぶ台の前に座って準備していました。」
と教えて頂いた時には、胸が温かくなりました。

 河野先生の行動の根っこにあるのは、相手に対する敬意なのだと思います。先生いわく「海外に行くのに英語を勉強するように、高齢者と接するのには戦争の歴史を学ぶのは礼儀。」なのだそうです。私は河野先生を認知症の師としていますが、知識やノウハウのみならずそう言った診療スタイル(生き方)も自分のものにしたいと思います。残念ながらプラモデル作りの趣味はないので戦争について河野先生ほど詳しくなれることはないと思いますが。
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# by kasama-hospital | 2013-08-26 23:49 | 認知症・介護

認知症の勉強スタイル

誰のために役に立つのかよくわかりませんが、今やっている勉強のスタイルについて書いてみます。

 先日の記事で書いたようにコウノメソッドをスタートさせ、まずは院内で定期的に診ている認知症患者さんの診断や治療を振り返っています。一方で、ありがたいことに「病院のブログを読んで来ました。」と患者さんを連れてこられるご家族も現れて、これまで以上に急ピッチで実力をつけなければ…とお尻に火がついた状態です。患者さんとご家族の方々、発展途上ではありますが力を尽くしますので、お付き合いをどうぞよろしくお願いします。

インターネットが普及した今は、本当にいい時代だと思います。病気のことを知りたい!とご家族が思えば、インターネットで検索すれば世界中の情報を手に入れることができるのですから。家族のためにと必死に勉強した家族が、その病気に関心のない医者の知識レベルを上回ってしまう…そんなことがあちこちで起こりうる時代です。

 ネットを活用しているのは実は私も同じです。河野先生の『認知症ブログ』を読んで勉強しています。どこよりも新しく有益な情報が手に入ります。
 ただ、自分自身の経験では、ネットだけで最初から最後まで行けるかと言うと…いくつかの落とし穴があるとも思います。

まず、ネットの情報は玉石混交で、まっとうなものから、利益が目的のインチキくさいものまで幅があるので、情報を取捨選択する力は間違いなく必要です。そして、これは信頼が置けそうだというものが見つかっても、ブログなどの時間の流れと共に発信される情報では、初心者が一から習得するのには、なかなか頭が整理するのが難しい面があります。

個人的な認知症の勉強を振り返ってみます。

最初はiPadで認知症ブログを端から読んで知識を得ようとしましたが、正直医者のはしくれである自分でも全く歯が立ちませんでした。「ナイフの刃様委縮って…なんだっけ?」と用語の理解もおぼつかない初心者だったので、膨大な情報の海におぼれているようで、かえって混乱してしまいました。

やはりスタートは紙媒体で…と言うことで教科書を購入。一通り読んだところで、情報を整理し今後もすぐ取り出せるようにと認知症ノートを作成し、疾患ごとにまとめていき、それを読み返すことでようやく頭の中が少し整理されました。院内の勉強用にと資料を作ったことも、復習・定着効果があったと思います。

そして先日ようやく、満を持して認知症ブログに戻ってきました。基本的な知識が整理されたので、新しい情報もすんなり吸収することが出来ます。ようやくこの宝の山を生かすことが出来る、と嬉しくなりました。アナログ人間で線を引いたり付箋を貼ったりそれをノートにまとめたりという作業でより吸収力がアップする方なので、少し大変(いや、かなりかも)ですがブログをプリントアウトしてファイルし、紙ベースで勉強しています。何しろ週1回の更新で1回分が20ページなどと莫大な量なので、とりあえず2013年分だけ…。せっせと消化しているつもりですが、翌週になると新しい記事がまた更新されるので、なかなか進んでいないように見えます。

 勉強と言うと何やら堅いイメージがありますが、疾患ごとに担当している患者さんを思い浮かべて、確かにあの人はこんな症状があったのか、あれはこういうメカニズムだったのかとか、じゃああの方は次回こうしようああしようとメモしたりと、日々の業務とリンクしているのでとても楽しい作業なのです。

 ちなみに最近の私はもっぱら朝型で、子供と寝かしつけた後に自分も10時頃には寝てしまい、朝に早めに起きて勉強しています。独身だったり子供がいない頃に比べると時間的な制限ができて、今になるとあの頃は楽だったな…と思いますが、不思議なことに当時より今の方が沢山勉強しているのが面白いところです。

 今日はこんなところで。皆さん、素敵な一日をお過ごし下さい。私も今日は子供の3歳のお誕生日なので、家族でケーキを食べてお祝いしようと思います。
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# by kasama-hospital | 2013-08-23 06:59 | 認知症・介護

ロコモ体操の練習中

今日の朝8時過ぎに病院を訪れた患者さんは、自動ドアが開くと同時に目の前に繰り広げられる異様な風景に、さぞびっくりされたことでしょう…。

なんたってこれですから…。
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中の風景を見た瞬間に、無表情のままクルッと踵を返して駐車場に戻られた患者さんがおられて、これって営業妨害ではないかと思いました。

実はこれ、ロコモ体操の練習風景なのです。
8月31日朝に笠間運動公園で行われる巡回ラジオ体操の後のイベントの一つとして予定しています。

 ロコモ体操とは、ロコモティブ・シンドローム(関節や筋肉が十分に使われないことによって引き起こされる骨折や寝た切りなどの望ましくない状態)を予防するための体操です。

 主に年配の方を対象としているので激しいものではなく、パッと見た印象では楽勝に見えるのですが、実際にやってみると、色んな部位の筋肉がプルプル震えて・・・かなり効きます。指導などと言っている場合ではありません。運動不足の私は、自分が毎日やった方がよさそうです。本当に。

 今日は職員の指導練習が目的でしたが、待ち合いホールで行ったので、外来を待っている患者さんにも一緒に参加して頂きました。糖尿病のインスリン導入で入院されている患者のOさんも参加して、

「これ、ホールで毎朝やってるんですか?」

と聞いていました。こんなこと毎朝ホールでやっている訳ではないのですが、介護予防という観点からは、毎朝ホールで皆でロコモ体操をやるというのは案外いいアイディアかもしれません。Oさん、斬新なアイディアをありがとうございます!
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# by kasama-hospital | 2013-08-22 00:18 | 今日の出来事

今日も張り切って診療中


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