当院での認知症タイプの割合・待合室ライブラリー

 9月から当院でコウノメソッドによる『もの忘れ外来』を立ち上げ、元々通院や訪問でお付き合いがあった方も含め40人前後の方を診察させて頂きました。まだ2ヶ月しかたっていないとは思えないほど、様々な驚きや気づき、そして喜びを頂いています。はるばる来院される患者さんご本人、付き添って一緒に来て下さるご家族の方、本当にありがとうございます。未熟ではありますが今後も精一杯力を尽くしますので、よろしくお願い申し上げます。

 一つの区切れとして、この2か月で診察した方の、タイプ別の内訳を出してみました。

LPC(レビー・ピック複合)6名 16%
DLB(レビー小体型) 12名 32%
FTLD(前頭側頭葉変性型)9名 22%
ATD(アルツハイマー型)3名 8%
ATD→DLB(アルツハイマーのレビー化)2名 5%
VD(脳梗塞型)1名 3%
タイプ不明 3名 8%
MCI(軽度認知障害)2名 5%

タイプ不明と言うのは、訪問診療などの診察を開始した時点で介護度が非常に高くコミュニケーションを全く取れない状態であり、かつ認知症の発症間もない時期からの経過を詳しく聞ける方が近くにいない、参考となる頭部CTも行えない(訪問診療)方が該当します。

世間一般で言われている「アルツハイマーが半分かそれ以上」という常識?から大きく外れた数字ではあります。しかし私の外来では、歯車様固縮がしっかりあって明らかにレビーという方でも「アルツハイマー型認知症」と診断されていた例が多いので、アルツ5-6割というのは「とりあえずアルツハイマーということにしておけば、半分以上の確率で当たるだろう。他の病名つけたって治療がよくわからないし。」という『とりあえずアルツ病』の方もかなり多く含まれていると思われます。

実際に外来で家族の方から聞いたお話では、一生懸命勉強されたご家族が、

「うちの母親の症状は、(先生の診断された)アルツハイマーではなくレビー小体型だと思うのですが…。」

と主治医に言ってみたところ、

「レビーだとしたって治療は別にない訳ですから…。」

と返されたというエピソードもあり。確かにその後の治療方針が付いてこないのであれば、あえて診断をつける意義は薄いと思われ、アルツだろうとレビーだろうと関係ないと言うことになるのでしょう。現にコウノメソッドを勉強する前の私は、上のように家族に詰め寄られたら、間違いなくドキッとしていましたし、内心戸惑っていました。

 それにしてもレビー小体型とピック、そしてその複合型であるLPCの患者さんは本当に多いです。そしてアルツハイマーは、割合的には少ない。その理由を考えた結果、本当に少ないという事実以外に、2つの仮説が浮かびました。

仮説1)レビー小体型は意識障害や幻視、ピック病は易怒性などのBPSD(記憶力低下以外の症状)が強く、せっぱつまって「病院に連れて行こう!」という流れになりやすい。一方アルツハイマーは発症も進行も緩徐なので、家族もゆっくりとその状態に慣れてゆき、受診のきっかけが掴みにくい。現にずっと拝見していた方でアルツハイマー型だと思われるご家族は、にわか勉強の私の治療の提案に対し、「まぁいい年齢だし、あまり薬などは使わなくていいですよ。」とおっしゃる方もいます。

仮説2)レビー小体型の家族は真面目で一生懸命なので、積極的に受診させる傾向がある。これは後日また別枠で詳しく書きますが、レビーのご家族は本当にまじめです。

 もっと勉強してゆけば、診断は大幅にくつがえる可能性がありますね。今年もあと2か月を切りました。年内に更にレベルアップするべく、勉強を重ねます。

 最後に当院の新たな取り組みのご紹介。以前からやりたいと思っていたのですが、ある方のご好意で大きく背中を押して頂き、実現しました。コウノメソッドに関連する書籍を、待っている方にご紹介し閲覧して頂けるコーナー、名づけて『待合室ライブラリー』です。

 現時点ではライブラリーと呼ぶにはあまりにささやかですが、まずは小さくても第一歩を踏み出してみることから。体調に余裕があり、待ち時間を持て余している方が、少しでも情報を得られるチャンスになればと願っています。来院された際には、ぜひご利用下さい。DVDの貸し出しも開始します。今後掲示板でのコウノメソッド紹介や、書籍の充実という形で発展させていければと考えています。

 それでは今日はこのあたりで。素敵な週末をお過ごし下さい。
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# by kasama-hospital | 2013-11-09 02:10 | 認知症・介護

見極めは難しいけれど。

 それまでは元気なご主人のリードで自宅で過ごされていた御年90ウン歳の女性患者Sさん。大腿骨骨折で手術をし、一応は歩けるようになったものの、歩行はいくらか不安定。なかなかの認知症(アルツハイマー型だが時々幻視も出現しレビー化しつつある)もある。真面目な娘さんは、「このままでは歩行も完全ではなくまた転ぶ危険があるから、リハビリ施設に移って何か月かリハビリをし、きちんと歩けるようになってから家に帰った方がいいのかしら?」と考えた。リハビリ施設はすぐには空かないので、数ヶ月から半年は待たないと入れない。環境を整えるために当院に転院となった。

 総合的に考えると、この方はリハビリ施設を経るより早めに在宅に戻った方がいいのでは…と考え、私個人の一意見としてご家族にお話をした。

 十分に歩けないから歩けるようにトレーニングをしよう、という発想そのものは素直で真っ当である。でもこれは、残された時間が十分にあって、身体能力に予備力がある若い人の考え方のように思う。身体能力が脆弱であれば、一生懸命リハビリをしても、今後絶対に転ばないとは言えない。そして平均年齢を軽くオーバーしたSさんに残されたお時間は、長くても数年。そのうちの貴重な半年を、施設待ちの入院や施設でのリハビリに費やすのはいかがなものか。本人も「早く家に帰りたいねぇ。」と言っており、高齢ではあるがしっかりしている旦那さんも、もう一度家で面倒を見てあげたいと言っている。あるかないか分からない(とは直接言わなかったが)数年後よりも、目の前のSさんの生活の質を高める方向で考えた方が幸せにつながるのではないか…。

 ご家族とこんな相談をしているうちに、入院中のSさんが歩き始めた。看護師が付き添って歩行リハビリを…ではなく、なんと自主練である。看護師さんが病室に行ったところ、数メートル離れた隣りのベッドの脇のサイドテーブルをゴソゴソいじっていたのだそうで。本人いわく探し物をしていたようだが、この先当院から更に別のリハビリ施設に移り、環境が再び大きく変われば、Sさんが混乱して認知症が進む危険性も高い。

 このエピソードが決め手となり、Sさんは直接家に戻ることになった。Sさんが生活しやすいように自宅の介護環境を整え、訪問看護や訪問リハビリを導入して。退院後初めての訪問では、日の当たる廊下に歩行介助バーが何本も設置されており、そこをつたって行くと自力でトイレまで行けるようになっていた。ご主人が設置したのだと言う。茶の間では、コタツの指定席に座ってニコニコ笑うSさんの姿があった。あと何年この生活が続くかわからないが、少なくても今の段階ではご家族もこれでよかったと言って下さっている。

 一方で、先日ブログでご紹介したレビー小体型の患者さんのように、治療を行うことで状態が劇的に良くなり、診療内容の選択肢が増える方もいるのも事実。

『主よ、変えられないものを受け入れる心の静けさと 

 変えられるものを変える勇気と

その両者を見分ける英知を我に与え給え。』

上の一文を読んだ時、まさに高齢者医療そのものだと思った。自然な身体の衰えを加齢変化として受け入れ共存していくゆるさや穏やかさも必要。一方で医療者には、何でもかんでも「年のせい」にして診療の質を上げる努力を怠ってはいないかという自問も必要。その両者の見極めは、なかなかに高度。永遠に修行が必要です。

写真は、関係ないけど『インフルエンザ予防接種始まっています』
(患者さんの許可を頂いて掲載させて頂きます。)
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# by kasama-hospital | 2013-11-07 07:17 | 認知症・介護

グラム染色強化合宿

こんにちは。台風の本島上陸を免れてホッとしています。

不器用な私、認知症一色だった数ヶ月を経て、最近もう一つ非常に気になっていた宿題に着手しました。それは、グラム染色。

2年前に、当院はよりよい感染症診療のツールとして、グラム染色を導入しました。(ご興味がある方はこちら)あれからグラム染色は感染症診療の道しるべとして日々使われています。肺炎や尿路感染でグラム染色を行うことが当然になった、染色もきちんと出来るようになった、そして顕微鏡を覗いて…その結果が臨床行動に100%反映されているか?それが今回の‘宿題’です。

 典型的なケースはよいのです。顕微鏡を交互に覗きながら検査技師の岡安さんとニッコリ。筑波大からの学生さんがいれば一緒に顕微鏡を覗き、目の前の結果からどんな抗生剤を選ぶかをディスカッション。数日後にフォローアップのグラム染色を行い、きちんと薬が効果を上げていることを確認できます。こんな風にいくと、非常に清々しい。しかし、いつも竹を割ったようにスパッといく訳ではありません。正直、自分の想定した結果と異なる結果が目の前にあり、どう解釈すればよいのかわからない時も。そんな時は、2人でう~ん、あぁでもこうでもないと話し合うのですが、結論が出ずに奥歯に物が挟まったような気持ち悪さが残ることもあり。グラム染色の達人が近くにいらして、その場ですぐに指導を仰げれば…ここはどうなんだろう?あれはどうなんだろう?と日々の疑問が積もっておりました。

 実力を上げるための対策の一つとして、これまでグラム染色師匠である相原先生の主催する『グラム染色中級試験』を受けてきました。これは公的な資格ではなく「茶道や華道のお免状のようなもので、楽しみながら実力をつけてもらうことが狙い」だそうです。初級資格を1年前に取り、現在中級に挑戦中。定期的にメールで送られてくるWebスライドの所見を取り(i-viewerというソフトで、目の前でスライドを覗いているようなリアルな世界が広がり、初めて見た時には感動しました)所見用紙を先生の元に送り返すと、採点されてスコアがつくのです。年間5回のテストで平均点が80点以上で合格。

実は私、既に5回中4回は受講済み。点数こそ現時点で何とか規定ラインを満たしているものの、回数を重ねることで問題点がくっきりと浮き彫りに。菌種の同定です。同じことを相原先生にも指摘されておりました。検査技師と異なり、医者は圧倒的に顕微鏡を覗く機会が少なく共通のウィークポイントなのだそうです。
 最近改めて細菌ごとの特徴をノートにまとめ直し、関連する感染症の教科書を読み返した時点で、機は熟した、と感じました。これから先じーっとアトラスを眺めていても、これ以上の進歩は望めない。独学の限界かもしれません。今こそ十分な知識を持っている師にマンツーマンで指導を受ける時期です。

そのような訳で、10月17日東京でトレーニングを受けてきました。
午前中は、先生の豊富なコレクションスライドから、菌種の同定に絞って次々と説明を受けていきます。午後からは、私が持参した実際の症例スライドを見て頂き、自分の診断や解釈、治療についてディスカッション。
 研修を終えた感想としては…言葉で表せないほど濃厚で充実した、豊かな時間でした。

菌種の同定については、『点と点がつながって、線になった』イメージ。単発でAという菌はこう、Bという菌はこうという知識だったのが、じゃあAとBの鑑別ポイントはどこか、Aと似ていて間違いやすい菌は他にどんなものがあるか、臨床の場ではどのように判断するか、治療は行うべきかという周辺知識が豊富に与えられ、頭が非常にクリアになりました。これまでいまいち特徴をつかみ切れなかった細菌についても、いくつかのポイントを教えて頂いてその目で見てみると、あたかも特殊な眼鏡を装着したようにくっきりと浮かび上がるように見えてくるという感動体験も。

マンツーマン指導のよい所は、自分の都合でいくらでも脱線(?)可能なところです。日頃の臨床に溜めに溜め込んだ疑問を、関連するスライドを見ながらここぞとばかりにぶつけさせて頂きました。どの方向からぶつけてもしっかりと受け止めて下さり的確に返して頂けるという空間には、何とも言えない心地よさがあります。お話をすればするほど知的好奇心が刺激されると言うか。自分の症例についても、目から鱗のご指摘もあり、グラム染色の可能性、奥の深さを改めて思い知りました。

『一回で片をつけようと思うな。臨床状況とマッチしない所見であれば、何度でも検体を取りなおせ』『感染症は須らく日和見的である』などの診療スタイルに関わる格言あり。これまで培養結果で目にして右往左往していた弱毒菌についても『弱毒菌が原因菌となりやすい現代において、培養には限界がある』からこそグラム染色から総合的に判断する重みづけが必要なのだと、非常に勉強になりました。『検体を粗末に扱うことは、患者さんを粗末に扱うことと同じ』というのも、以前相原先生から教えて頂いた言葉で、今でも肝に銘じています。

 1日が終わる頃には、目の前の霧が徐々に晴れていくような清々しさと、疲れているにも関わらず明日からまた頑張っていこうというエネルギーで満ち足り、高揚した気持ちで会場を後にしました。(教えて頂いたあれやこれやを考えながら駅に向かい、慣れない東京で道に迷ったのも仕方がないことです。)

 ‘次の一手’は、この収穫を翌日からの診療に生かすこと。知識の再整理はもちろんのこと、今後も継続的にご指導を頂けるシステム作りのために、顕微鏡用カメラの購入を画策中。現在は情報収集の段階ですが、カメラが手に入り日常的にご指導を仰ぐ環境を心待ちにしています。
 一日お付き合いを頂いた相原先生、会場をお貸し頂いたスギヤマゲン様、貴重な機会を本当にありがとうございました!
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# by kasama-hospital | 2013-10-26 10:51 | グラム染色

もう一つのピック感

 朝夕うんと冷え込み、夏から一気に冬に足を踏み入れてしまった感じですね。

 今日は、LPC(レビーとピックの複合)の認知症患者さんの改善例をご報告します。発症は5-6年前。家族を泥棒扱いしたり、連れ合いの浮気を疑ったりと攻撃的な言動が目立ちました。家族に受診を促されるも拒否。精神科を受診したのは3年前のこと。この頃には、大声で罵る、つねるなど周囲への暴力も出て、精神科への入院手続きまでしたくらいですから、陽性症状はかなり激しかったのでしょう。私はここまで聞いて「ピック病かな…」と思いましたが、受診先では「アルツハイマー型認知症」と診断されています。レスリン、パキシル、ランドセン、リスパダールなどが処方されました。

 恥を承知で白状しますと、数か月前に一度感染症で入院した際、私はこの方の認知症にノータッチでした。アルツハイマーなのに、なんで抗うつ薬?という素朴な疑問がフッと湧きましたが、コウノメソッドを本格的に開始する前です。認知症診療にまだ自信がありませんでしたから、専門の先生の処方に余計な手出しをしてますます悪化したら大変…と見なかったことにして、感染症の治療に専念したのです。

 その結果、病棟はとにかく大変でした。私が、ではなく看護師さんが…。昼夜を問わず「××ちゃ~~ん!!!」と家族を呼ぶ叫び声が廊下にまで響いていたことと、怒りスイッチが入ると目が座って額に2本くらい横じわが出来て、それがワナワナ震えていたことは覚えています。それでも朝は1階の外来ブースに降りてしまい夕は回診を終えて病院を離れるとその叫び声は聞こえてこないのをいいことに、当時の私はつまりは逃げてしまったのです。あの時は、本当に看護師さんごめんなさい。私が感染症の治療に専念したせいか本人の免疫力が強かったせいか(こっちでしょう)この時はあっと言う間によくなり、短期間での入院ですんだのがせめてもの幸いでした。でも、この方の入所する介護施設では、24時間365日この方と接するのがお仕事です。もしかすると退院の知らせを複雑な気持ちで聞いていたかもしれません。

そして先日、またその方が入院することになりました。看護師さんも内心ムム…と思ったはずです。今度は血液培養から菌も検出され前回より長期の入院が予測されます。よ~し覚悟を決めようと、ご家族に当院で内服薬を調整させて頂くようお願いし、了解を頂きました。ただし家庭の事情により、強力な助っ人であるフェルガードは今回は登場できません。

歯車様固縮はしっかり陽性で、安静時振戦も体幹傾斜もあり。なんと寝言も幻視も意識障害もあって、レビースコア10点。尿失禁、診察拒否、二度童、語義失語、スイッチ易怒、CT所見もありピックスコア6点のレビーピック複合型と診断しました。全体的なイメージはピック病のエネルギー過剰です。

まずは陽性症状の制御でウィンタミン6mgを一日6包。これで大方は制御できるはず!効き過ぎて眠そうだったら減らしてね、と自信を持って処方したものの、翌朝も、翌々朝も、看護師さんから「昨晩も寝ないで叫んでいました。」「点滴を自己抜去しました。」との報告。え~~~。慌ててマニュアルノートを引っ張り出し、薬を調整しなおし。これを繰り返し、最終的にウィンタミン72mg(最高量)、セルシン6mg、レンドルミン1錠でようやく穏やかな笑顔を見せるようになった時には、本当にほっとしました。続いてリバスタッチパッチ開始。

チャレンジテストを経てメネシットも開始して少したった頃のこと。ナースステーションでカルテを書いていた私の前を一人でトイレに歩いていくおばあちゃんが。看護師さんに声をかけられ、‘あの患者さん’だと気づいた時には本当に驚きました。腰は曲がっていますが、杖も使わずに一人で歩いています。トイレに行く前にも長いことナースステーションの車いすに座っていたのに、ニコニコして黙っていたので私は気がつかなかったのです。これが一日中大声で叫びっぱなしだった方と同じ人だとは…。

 たまたま月単位の入院治療が必要にも関わらず、ご本人の全身状態は悪くないというタイミングが重なり、私と看護師さんは患者さんが改善していく経過を目の当たりにするという幸運に恵まれました。まるで別人のように「ありがとうね~。あんたの手はあったかいね~。」と私の手を握ってくれる患者さんの両手を、こちらの方こそありがとうという気持ちで握り返しました。そして、あ、これもまたもう一面の‘ピック感’なのかな…と思いました。

 一般的にはピック感と言うのは、ピック病の患者さんに対してマイナスのイメージで使われる言葉です。初診のピック病患者さんが腕組み足組みをして診察に拒否的、訳もなく不機嫌な様子はかなりのインパクトがあり、その姿だけでピック病らしいと思わせる雰囲気があります。しかし一方で、私が接した何人かのピック病患者さんは、それだけではないピック病らしさも垣間見せてくれました。診察室で子供をあやすために置いてある犬のぬいぐるみを撫でる男性、エネルギーが制御された後に見せる満面の笑顔や警戒心なく腕などを触ってくる姿、それは‘二度童’の一面です。一度童、つまり現役の乳幼児と日々格闘している母親の私は、こちらのセンサーは少々敏感です。初診のピック病患者さんを前にすると、まだ数人ながら改善したピック病患者さんを思い出し、ああいう笑顔をまた引き出せますように…と願いながら診療を始めるのです。

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*写真は、先日1歳のお誕生日を迎えた次男の誕生日ケーキ。長男がフライングしないよう、蛇が護衛しています。護衛効果は抜群でした。
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# by kasama-hospital | 2013-10-05 04:11 | 認知症・介護

長谷川式が10点アップ!治療方針まで変更へ!!

こんにちは。
2回続いた3連休、皆様はいかがお過ごしでしたか?私も柏の実家に帰省したり、宇都宮動物園で子供と一緒にキリンにニンジンをあげたりと楽しい休日を過ごしました。

最近読んだ本です。
『そして父になる』
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福山雅治さん主演で映画化されましたね。自分の小さな子供に置き換え、ある日お世話になった産科病院から私の所に電話があったらどうしよう…う~ん…と胸がしめつけられるような気持ちになりました。私だったら、まだ1年しか一緒にいない下の子だって、もう手放すことは絶対に出来ない気がします。最後は清々しく温かい結末で感動です。

 さてさて、今日も嬉しい改善例のご報告です。

内科系の腫瘍がある方ですが、認知症もあるため‘これ以上積極的な治療の適応がない’として、緩和ケアにシフトしていく方針で当院に紹介となりました。(当院は訪問診療も行っているため)
3ヶ月前の初診時、紹介状に認知症のタイプについては記載されていませんでした。認知症については、5年前から精神科に通院されていたのです。そこでリスパダール1mg、アーテン2mg、リスミーなどが処方されていました。

「薬が始まって認知症症状は良くなりましたか?」と聞いたところ、ご主人がボソッと「いや、むしろ悪くなった気がする。歩けなくなった。」と。初診時、長谷川式は12点、暗い表情で口をモグモグさせており(Oral dyskinesia)歯車様固縮がしっかりありました。以前はしょっちゅう転倒しては頭を打撲しており、最近は臥床しがちとのことです。レビー小体型認知症だと思いました。(後日時間をかけて診察すると、レビースコア10点、ピックスコアも5点でLPCと診断しました。以前は気に入らない人に物を投げることもあったというエピソードからは、ピックの要素を感じます。)

 あちこち通院されるのも大変になってきたとのことで、今後は内科も精神科も当院で処方をまとめることになりました。最初に行ったのは、レビーの歩行を悪化させるリスパダールを中止することでした。次にアーテンをメネシットに変更しソラナックスを中止すること。

 リスパダールを中止して1ヶ月半ほどたった頃、驚くことに紹介元の総合病院の先生からお手紙を頂いたのです。
「リスパダールを中止してから、こちらの治療がしやすくなり感謝しています。」
腫瘍に対しまだ残された治療をしていたのですが、その時の本人のコミュニケーション能力、歩行能力がかなり改善しそのため治療がスムーズになったとの、とても嬉しいお手紙でした。その後ご本人が受診されたのですが、確かに驚くほど改善していました。自宅でもほとんど転ばなくなったとのこと。
驚くことはまだまだ続きます。あまりにも改善が著しかったため、総合病院で当初はまず無理だろうと思われていた手術まで、再検討しようという方針になったのです。結果的には外科の先生とご家族の話し合いの中で、自宅で過ごせる時間を大切にしようと手術は行わないという結論に達しましたが。私自身は、その方の総合的な状態を考えると必ずしも手術をすることが正解かどうか微妙なところなので、手術をしないのも一つの選択肢かとは思います。ただ、全く認知症に関わっていない別の先生の目から見て、もしかすると手術もいけるかんじゃないか、と短期間に方針を変更されるケースはあまり経験したことがないので、それほど見た目の印象が変わったという事実を素晴らしいと思いました。訪問診療も行う者として、この方に残された人生の大切な時間を、できるだけ家族と穏やかに過ごして頂こう、最後のお別れの時まで継続して力になろうという意欲でいっぱいです。リバスタッチパッチを追加したのがごく最近のことなので、もっともっと良くなるという期待を持っています。この方の長谷川式は…なんと22点になっていました。

それにしても、この方の改善のスタートは『ひき算』でした。レビー小体型認知症の方の大きな特徴に薬剤過敏性があり、一種類の薬が破壊的にその方の活動性を奪います。難しいのが、それが薬のせいなのか認知症や加齢に伴うあがらえない衰弱なのかが、一般の方から見て見分けがつきにくいということです。この方も、悪性腫瘍で総合病院を受診するという一つのきっかけがなければ、そのまま‘やむを得ない経過’として認知症の治療を継続されていたと思います。もっともっと潜在的によくなる可能性を秘めた患者さんがいる、ということを実感する今日この頃。コウノメソッド初心者ながら、待っているだけではなくこちらからもどんどん地域に情報を発信をして、認知症患者さんが改善するお手伝いをしたいと思います。
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# by kasama-hospital | 2013-09-24 12:05 | 認知症・介護

今日も張り切って診療中


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