茨城新聞に掲載して頂きました

 いよいよ冬らしく冷え込む日々が始まりましたね。今が底だと思うと、頑張れそうです。

 昨日の外来では、以前は寝たきりで大声で叫びっぱなしだったLPCの患者さんのご家族に、「びっくりするほどいいんです!表情が全然違う!歩いているんです!」と言われ、朝から幸せな気持ちになりました。

 年明け早々の1月8日、茨城新聞さんが当院のもの忘れ外来の取り組みを取り上げて下さいました。コウノメソッドの紹介に加え、実際に治療を行い改善が見られつつある患者さんの協力を頂きご家族のインタビューも掲載しています。
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 それと共に、『慌ただしい2014年の幕が開けた』という印象です。新聞の威力というのは予想以上に大きく、その反響の大きさに驚いています。掲載からまだたった3日ですが、連日のように予約受付の電話が入り、あっと言う間に予約を待つ方の人数が60人近くまで増えてしまいました。

 思った以上に認知症診療の実情は深刻なのだと言うことを、電話の件数とメッセージが物語っています。一件一件の電話の向こうに、日々の暮らしの中での家族の切実な物語が存在します。新聞をたまたま目にしなかった(見る余裕もない?)潜在的な患者さんも相当数いるのでしょう。予約外来を待っている間にも病状が進行してしまうのではないかと心配されるご家族の不安はもっともで、やむを得ないと傍観していられない緊急事態。

 現状では、予約外来の枠は水曜日の午後のみで、物忘れ外来と禁煙外来がこれに該当します。それ以外の時間には通常の一般外来、内視鏡や超音波といった検査、午後は在宅患者さんの訪問診療や健診、予防接種と予定が詰まっており、プラスアルファで割ける時間がないのが実情です。
 また9月にコウノメソッドをスタートさせたばかりの私の最大のウィークポイントは、初回診療にかける時間がどうしても長めになってしまい、多くの人数を診ることが出来ないということ。初回はこれまでの経緯をお聞きし、長谷川式、各タイプごとのスコアをつけ、頭部CTと血液検査の後に、診断名と治療の説明を行います。キャリアの圧倒的な差があるとは言え、師匠である河野先生の初診平均17分というのは、私にとっては驚異的です。ゆっくりと話をすることでご本人や家族の気持ちを汲むことができるというメリットがある一方で、やはりこれだけ多くの方が待っている現状を考えると、スピードアップは必要です。

 患者さんの全身を診たい、継続的に診たいという総合診療科的な気持ちは今も強く持っており、そこは少々ジレンマではありますが、大きな方向性についてのんびり考えるのは、もう少し後。今は求めて下さる方がいる以上、未熟であっても全力を尽くすのみ。大急ぎで事態を改善させるべく、動きたいと思います。困っていらっしゃる患者さんとご家族の方、必ずご期待に応えますので、ほんの少しお待ち下さい。

 最後に我が家の残念なクリスマスケーキのご紹介。ホイップクリームを全部使い切ろうという浅ましさにより、非常に見苦しい見た目になってしまいました。しかも砂糖が黒糖だったため、クリームがほんのり茶色…。
料理の腕前の改善も今年の課題(むしろ急務?)ですが、キャパシティが狭いのでこちらは残念ながら後回しです。息子よごめん。
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# by kasama-hospital | 2014-01-11 06:49 | 認知症・介護

ヨードうがいはダメです!

 あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願い致します。

 さて、寒さと共に流行ってくる急性上気道炎。このシーズンには、

「かぜを引かないように、うがい薬を下さい!」
「かぜで喉が痛いので、うがい薬を下さい。」

と言ってこられる患者さんがいらっしゃいます。まじめな中年女性が多いでしょうか。生活をきちんと管理しようという心がけは素晴らしいのですが、実は大きな落とし穴が。

 どんなうがい薬をイメージしているのか聞くと、「茶色くて臭い…」ヨードうがい液(イソジンうがい液)のことが圧倒的に多いです。あたりまえのように使われているこのうがい液ですが、実は風邪の予防には効果がない(むしろ逆効果)だと言われています。

 2002-2003年に京都保健管理センターのグループが行った研究で、「ヨード液うがいをする群」「水でうがいをした群」「うがいをしない群」に分け、風邪の発症率を比べたデータがあります。これによると、最もかぜを引きにくかったのは、水うがい群でした。河村教授は「水の乱流によって、ウィルスそのものやプロテアーゼ(ほこりの中にありウィルスにかかりやすくする)が洗い流されること、また水道水に含まれる塩素がが効果を発揮したと考えられる。」と述べています。一方ヨードうがいで効果が低かった理由としては、ヨードが殺菌効果と共に人間の細胞にも障害をもたらし粘膜が荒れることで、風邪ウィルスの侵入を容易にしている、と言われています。(引用)http://www.kyoto-u.ac.jp/health/006.htm

 予防として使う正常粘膜でさえこの結果ですから、実際に風邪を引いてヒリヒリ喉が痛い時、つまり傷んだ粘膜への細胞障害性は更に大きいことが予想されます。喉が痛いからせっせとうがいをしていることが、ますます治りを悪くする結果となっているのですね。この研究結果、臨床に即していて非常に興味深いと思うのですが、医療機関でヨードうがい液を出される方は多いということは、医療関係者にさえ浸透していないということで残念です。日常に役立つ大切な知識なので、せっせとヨードうがい液をしている真面目なご家族や友人にぜひ教えてあげて下さい。

 最近かなり広がりを見せている「うるおい治療」という傷の治療があります。傷は乾燥させるのではなくしっとり湿らせた状態を保った方が傷の再生を促されるという理論です。この治療の提唱者である夏井 睦先生は、それまで常識とされていた傷のイソジン消毒にも異を唱えており、こちらもうるおい治療の一環として広がりを見せています。私も診療上この理論に従って傷の管理をしていますが、処置に痛みを伴わず綺麗に治ることが多いので患者さんに喜ばれます。傷の治療とうがい、一見関係がなさそうですが、実はダメージを受けた皮膚と粘膜を消毒液にさらすという点では問題は一緒ですね。

 外来であたりまえのようにヨードうがい液を求める方には、上のような説明を(外来は非常に混んでいるのでかなりはしょって簡単に)行い、基本的には水か塩水、緑茶や紅茶によるうがいで十分。どうしてもうがい液を使ってうがいをしたい!とお薬が大好きな方には、創傷治癒効果があると言われているアズノールうがい液を出しています。
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# by kasama-hospital | 2014-01-06 06:14 | プライマリケア

レビー患者さんのご家族はすごいです!

 すっかりご無沙汰しているうちに、年末に突入してしまいました。外来・病棟共に忙しく、書きたいことが沢山たまっています。

レビー小体型の患者さんは、元来生真面目な性格で堅い職業(銀行員・税理士・教師など)についていた方が多いと言われています。そのような真面目な方は人生のパートナーとして真面目な相手を伴侶に選ぶため、生まれてくる子供も真面目になる。これを河野先生は『レビー遺伝子』と名付けています。このような子供は親が認知症になるや、認知症についてものすごい勢いで勉強し、あっと言う間に不勉強な医者を上回る知識を身につけてしまいます。

9月からもの忘れ外来を始めて、このレビー遺伝子をひしひしと感じるようになりました。

レビー小体の家族の特徴

その1)症状を詳細に記録して持参する。
 これが一番の特徴です。診察室に入って挨拶をしてさぁ本題というタイミングで、息子さんからそっとA4用紙が手渡されます。綺麗にパソコンで打たれホチキスで閉じられたそれを見た瞬間、中を読むまでもなく「レビーかも…」と思うのです。そこには、発症からの詳しい症状、いつどこを受診してどんな検査をし、何と診断されたのか、どんな薬が何mgで処方されたのか、その薬でどんな症状が出たのか…が詳細に記録されています。経歴に関しては私がカルテに追記する必要がないほどの完成度であることも。こんな素晴らしい病歴を書いて下さる方のご両親は、私の乏しい経験では100発100中でレビーでした。
肝心のA4用紙の内容と言うと、幻視や大声の寝言、歩行がゆっくりになっていくなどの典型的な症状が綴られ、「他院でアルツハイマーと診断されアリセプトを処方されてから」更に歩行が悪くなって歩けなくなった、今は昼間からウツラウツラと寝ている、などと書かれています。もう、記載内容全体から「うちの親は、レビーなんです!!」というメッセージが痛いほど伝わってきます。

その2)複数の家族が付き添って来院する。

 もちろん全員ではありませんが、これもレビーのご家族の傾向と言えます。緊張した面持ちの配偶者、娘さんや息子さんが何人も診察室に入ってこられて椅子が足りない時点で「もしやレビー…?」と思うのです。大切な両親の初めての診察だから…と言うことで、複数の兄弟姉妹が自分の仕事を調整して来られるのですが、2回目3回目の診察でも、何人かで付き添ってかわるがわる症状を説明して下さることもあり、とにかく熱心です。

その3)初診で既にフェルガードを飲んでいる。

 とにかく熱心に情報収集をされており、よいと思われることはやってみようというスタンスのご家族なので、健康食品であるフェルガード100M(米ぬかとガーデンアンゼリカの配合サプリメントで、認知症の予防・症状改善効果が高いと言われています)を既に購入し、飲み始めている方も多くいます。中には異なる2種類のフェルガードを朝夕と昼で飲み分けている方も。一般的な薬剤に対しての知識も深く、「今日は抑肝散とメネシットという薬を追加したいと思うのですが…」と言って詳細な説明をしようとしたところ、息子さんがメモを見ながら「よかった。実は自分も今日はこの薬を出してもらえないかと思って来ました。」と言われ、2人で笑ってしまったことがあります。それ以来、どう考えても知識がありそうなレビーのご家族には、最初の方で「コウノメソッド、知っていますよね?本も読まれました?」とあらかじめ確認をしてしまい、ごく初歩的な説明をスキップするようになりました。

3つの特徴を挙げてみましたが、全て根っこの部分は同じ。真面目で一生懸命という一言につきます。コウノメソッドを始める前の私が、それなりに認知症患者さんやご家族と接点を持ちながらも『レビー遺伝子』の存在を感じなかったのは、単に数を多く診ていないだけではなく、レビー遺伝子を持つ家族が納得・満足できるレベルの認知症診療を提供できず、そのような家族を引き寄せられなかったことも一因でしょう。それほど不勉強な医師にとって、レビー小体型のご家族は手ごわいのです。手ごわいと言うと語弊があるかもしれません。彼らは一般的に礼儀正しく、医療サイドに無理な要求をしたり、いまいちな治療をしてきた医者にさえ、それを糾弾するような真似はしません。冷静な目で「この医者に通院して良くなる可能性があるか」を判断し、ダメだと思ったらそっと離れていくだけです。一方で、こちらがきちんとした診療を行えば、その効果をきちんと観察して評価してくれる、副作用にも量を調整するなど冷静に対応してくれるという、この上なく頼もし
いチームの一員を担ってくれる存在です。

 私が直接ご家族から聞いた話では、そのようなご家族がレビー小体型では?と前主治医にそっと聞いた時の主治医の反応は

「アルツハイマー+パーキンソン病だと思います。」

「レビーだとしたって別に治療はありません。」

「(薬を減らしたいと言った)息子さんは医者なのか。薬を減らして悪くなっても、私は責任を持ちません。私は何千人も患者を診てきた。アリセプト10mgに増やしてもいいくらいだ。健康食品なんて意味がない。」
全て別の医師の発言です。知識レベルと人間性の両方を疑いたくなる3人目の医師の発言には、絶句しました。このような医師が「その道の世界的権威」として患者さんに紹介されたのです。レビーの家族が手ごわいというのは、家族が問題なのではなく、その思いを受け止める知識も情熱もなく、逆切れとも言えるべき発言をする医療側の問題だということがよく分かります。

 きたるべき2014年も、この現状を少しでもよくするために、頑張ります!皆様、よいお年をお迎え下さい。

 写真は我が家のクリスマスツリー。いたずら盛りの1歳児と3歳児がかたっぱしからオーナメントを引っ張って落としてしまい、寂しい飾りつけになってしまいました。
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# by kasama-hospital | 2013-12-29 07:41 | 認知症・介護

ケアマネージャーさんにSOS !!!

 9月 19日、11月21日の2日にわたり、笠間市の介護保険利用調整会議にお邪魔してケアマネージャーさんにお話をする機会を頂きました。内容は、コウノメソッドの理論に基づいた『認知症の診断・治療』について。以前からお話するチャンスを切望していたので、渡りに船です。

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 なぜこのタイミングでケアマネージャーさんなのか? 

 それは、地域で潜在的に治療を必要としている患者さんを病院に連れて来て頂くためです。私がいくら何とかしたい!と診察室の中で焦っても、ご本人や家族の方がもの忘れ外来の存在を知らず、またどうせ治療したって…とあきらめていれば、受診して頂くことは出来ません。認知症にまつわる諸々の症状で困り介護保険のお世話になる時に相談役となるケアマネージャーさんなら、そのような方に受診をお勧めできる立場にあります。

 1回目の勉強会では診断編と題して、認知症の診断そのものに頭部CTは必要でないこと、認知症のタイプ鑑別にはCTが役に立つが、症状と身体所見でかなりいい所まで絞り込めることを説明し、タイプ別の典型的な症状をイラストを交えてお示ししました。1回目の狙いとしては、私のような若造と比べ物にならないほど沢山の認知症患者さんと接した経験を持つケアマネさんが、「毎日見ている〇〇さんは、レビーだったんだ!」と気づいて頂くこと。そして介護スタッフどうしでこっそりと「あの方の興奮は、どう見てもピック的だよね…。」と仮診断を下した上で、受診された際に、診断に重要なエピソード(診察や検査を渋った、万引きのエピソードなど)があれば教えて下されば理想的…です。

 2回目は治療編。認知症の考え方の大筋(家庭天秤法など)を示し、タイプ別の治療方針について説明しました。そして最後に、「ありがちだけれど患者さんを追いつめる治療のチェックリスト」を作り、他院でこんな処方を受けていて病状がよくならず困っている方がいれば、ぜひ病院を受診させて下さいとお願いして締めくくりました。

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 反応は…手前味噌ですが、とてもよかったと思います。多くの方がうんうん…と頷きながら一生懸命聞いて下さいました。終わった後に鋭い質問もあり、「この病院を近いうちにやめる予定はないのですか?」という癒し質問もあり。(あ、でもいきなりいなくなられると確かに困りますよね。)

 終了後に頂いたアンケートでも、私の知って頂きたい!と強調したポイントが、きちんと理解されていることを感じました。また『認知症の方を担当して困難なケースはありましたか?』という質問に対し、33名中29名が『あった』と答えていたのが印象的です。その具体的な内容を読むにつけ、現場の切実さがひしひしと伝わってきて、大急ぎで対応しなければ…と感じました。『今回のような有益な講座をまたお願いします』という要望もあり、春には続編も検討されているようです。ありがたやありがたや。

 今回の試みは、以前河野先生が展開された『知立(ちりゅう)作戦』にならっています。認知症治療について一生懸命情報発信をしていても、医師がさっぱり動かない。それならケアマネージャーだ!!ということで、ケアマネージャーさん向けの勉強会を行い知識を普及したところ、認知症の症状や治療に詳しくなったケアマネージャーさんが、治療が必要な患者さんを河野先生の所にどんどん連れてくるようになった…中には来る前から診断をつけて、明らかに有害と思われる薬を調整するスーパーケアマネさんもいるとか。私はこの話を読んで、突破口を見つけようという情熱、考え方の柔軟さに、感動しました。

 勉強会の後に、嬉しかったことがいくつも。1回目の勉強会を終えて間もなく、あるケアマネさんが患者さんとご家族をもの忘れ外来に連れて来て下さいました。彼は最初に「コウノメソッドを知っている人は?」という質問に手を上げてくれたアンテナの高いケアマネージャーさんです。こういう方が笠間にいて下さることは、とにかく頼もしいです。

 そして今日、別件で外来に訪れた施設のスタッフも兼ねるケアマネさんが、フェルガードについての質問をしてくれました。彼女は担当者の家族にお渡ししようと、プリントアウトしたフェルガードの資料をバッグに忍ばせていました。コウノメソッドの波が確実に笠間市のケアマネージャーさんに広がっていることを感じます。

 今後は訪問看護師さんやヘルパーさん、ケアマネージャーと言ったコメディカルの方がもっと気軽に認知症の方の対応や治療について相談できるように、気軽な質問タイム(名称未定)の時間や場所を設定することを考えています。チームかさまの皆さん、ぜひ一緒にがんばっていきましょう!
 
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# by kasama-hospital | 2013-11-28 04:07 | 認知症・介護

『深い霧が晴れると、そこには荒馬がいた』

 叙情的なタイトルをつけてみましたが、実はこれ、LPCの患者さんのことです。

 LPCと言うのは、レビー小体型・ピック病の混合型認知症の略。河野先生の造語です。
物わかりが悪い私に、患者さんが「まだわからないのか。それならほらまた!」と似た状態を示し、問題提起をして下さいます。しっかり肝に銘じて今度はうまく乗り切れるように、書き留めておきます。

CASE1)
とにかく初回のご本人は眠くて眠くて…。家族からの病歴とCT所見を元にLPCと診断したものの、初回のこの方はレビーが前面に出ており、ピックらしさを感じることはありませんでした。外来でためらいなくニコリン注射を打ったところ、早くも帰りの車の中で多弁に。それだけならまだしも、落ち着きなく何回も家を出て行くようになり、一度は警察まで呼ぶはめに。慌てて抑制薬であるウィンタミンを追加処方。
次の外来でご家族に
「ウィンタミンが出て本当によかった。」
と言われた時には、自分の診療でご家族に別の苦労を与えてしまったことを申し訳なく思いました。

 この方はウィンタミンが出てからも、診察室で座るのに少し時間がかかり、座るとよく意味のわからないことを怒ったような口調で言います。そして!腕組みしながら、よだれを垂らして寝てしまうのです!この姿を見た時には、これぞLPC!!と膝を打ちたくなるほどの衝撃を受けました。

 やはり日中の傾眠が目立つため、ウィンタミンを併用しながら再度ニコリン注射を行うとよい所に落ち着く可能性がありますが、奥様は「わかるんですけど…以前の落着きなさを思うと、もうちょっとだけニコリンは待って下さい。」と言って、ニコリン再トライは保留となっています。家族にこんなトラウマを与えてはいけません。

CASE2)
 前医の精神科でアリセプト5mgが出ていたレビー小体型の方です。

 長谷川式は考える集中力がない様子で全く答えられず、本人も「こんな状態になってしまって…」と非常に戸惑われています。眠いんだから質問に答えられないのはあたりまえなんですよ、必ずよくなりますから、と励まし、アリセプト中止を指示。その日はニコリン注射を打って帰宅としました。幻視に対して処方した抑肝散は、飲むと食欲が落ちるとのことで継続できなかったようです。

次の診察日。意識障害はだいぶ改善し、日中もずっと寝ていた状態から、茶の間で座って過ごすことが多くなったとのこと。しかし同行したお嫁さんは言いにくそうに、

「一長一短…ですかね。」

とおっしゃいました。意識がはっきりし、自分の思いを言葉にしたいのに、語義失語でうまく伝わらない。回りくどい説明になってしまい、それでもうまく伝わらないと、やつあたりのような攻撃的な言動が目立つようになったとのこと。この方もレビーの霧が晴れたらピックが目立つようになったケースです。慌ててウィンタミンを追加し、うまくいけばその時に処方を開始できるかも…と目論んでいたリバスタッチパッチは次回の宿題としました。

以上2症例とも、カルテにはっきりLPCと診断名を書いていたにも関わらず、目の前のレビーらしさに気を取られて、ピックの陽性症状対策をとらなかったことが反省点です。目の前でウツラウツラする方に、心情的には抑制薬を出しにくいのは事実です。しかしピックの陽性症状の強さを考えると、LPCと診断した以上やはり先を見越して対策を立てなくてはいけないようです。最初からほんの少しウィンタミンをかませる、もしくは家族の方に「こんな時には飲ませて下さい」と説明してあらかじめ渡しておく、というのがいいのかもしれません。まだまだ修行が必要です。

写真は、実家のある柏で清水公園を訪れた時のもの。荒馬というにはちょっと迫力不足?
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# by kasama-hospital | 2013-11-17 00:53 | 認知症・介護

今日も張り切って診療中


by kasama-hospital

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