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ケアマネージャーさんにSOS !!!

 9月 19日、11月21日の2日にわたり、笠間市の介護保険利用調整会議にお邪魔してケアマネージャーさんにお話をする機会を頂きました。内容は、コウノメソッドの理論に基づいた『認知症の診断・治療』について。以前からお話するチャンスを切望していたので、渡りに船です。

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 なぜこのタイミングでケアマネージャーさんなのか? 

 それは、地域で潜在的に治療を必要としている患者さんを病院に連れて来て頂くためです。私がいくら何とかしたい!と診察室の中で焦っても、ご本人や家族の方がもの忘れ外来の存在を知らず、またどうせ治療したって…とあきらめていれば、受診して頂くことは出来ません。認知症にまつわる諸々の症状で困り介護保険のお世話になる時に相談役となるケアマネージャーさんなら、そのような方に受診をお勧めできる立場にあります。

 1回目の勉強会では診断編と題して、認知症の診断そのものに頭部CTは必要でないこと、認知症のタイプ鑑別にはCTが役に立つが、症状と身体所見でかなりいい所まで絞り込めることを説明し、タイプ別の典型的な症状をイラストを交えてお示ししました。1回目の狙いとしては、私のような若造と比べ物にならないほど沢山の認知症患者さんと接した経験を持つケアマネさんが、「毎日見ている〇〇さんは、レビーだったんだ!」と気づいて頂くこと。そして介護スタッフどうしでこっそりと「あの方の興奮は、どう見てもピック的だよね…。」と仮診断を下した上で、受診された際に、診断に重要なエピソード(診察や検査を渋った、万引きのエピソードなど)があれば教えて下されば理想的…です。

 2回目は治療編。認知症の考え方の大筋(家庭天秤法など)を示し、タイプ別の治療方針について説明しました。そして最後に、「ありがちだけれど患者さんを追いつめる治療のチェックリスト」を作り、他院でこんな処方を受けていて病状がよくならず困っている方がいれば、ぜひ病院を受診させて下さいとお願いして締めくくりました。

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 反応は…手前味噌ですが、とてもよかったと思います。多くの方がうんうん…と頷きながら一生懸命聞いて下さいました。終わった後に鋭い質問もあり、「この病院を近いうちにやめる予定はないのですか?」という癒し質問もあり。(あ、でもいきなりいなくなられると確かに困りますよね。)

 終了後に頂いたアンケートでも、私の知って頂きたい!と強調したポイントが、きちんと理解されていることを感じました。また『認知症の方を担当して困難なケースはありましたか?』という質問に対し、33名中29名が『あった』と答えていたのが印象的です。その具体的な内容を読むにつけ、現場の切実さがひしひしと伝わってきて、大急ぎで対応しなければ…と感じました。『今回のような有益な講座をまたお願いします』という要望もあり、春には続編も検討されているようです。ありがたやありがたや。

 今回の試みは、以前河野先生が展開された『知立(ちりゅう)作戦』にならっています。認知症治療について一生懸命情報発信をしていても、医師がさっぱり動かない。それならケアマネージャーだ!!ということで、ケアマネージャーさん向けの勉強会を行い知識を普及したところ、認知症の症状や治療に詳しくなったケアマネージャーさんが、治療が必要な患者さんを河野先生の所にどんどん連れてくるようになった…中には来る前から診断をつけて、明らかに有害と思われる薬を調整するスーパーケアマネさんもいるとか。私はこの話を読んで、突破口を見つけようという情熱、考え方の柔軟さに、感動しました。

 勉強会の後に、嬉しかったことがいくつも。1回目の勉強会を終えて間もなく、あるケアマネさんが患者さんとご家族をもの忘れ外来に連れて来て下さいました。彼は最初に「コウノメソッドを知っている人は?」という質問に手を上げてくれたアンテナの高いケアマネージャーさんです。こういう方が笠間にいて下さることは、とにかく頼もしいです。

 そして今日、別件で外来に訪れた施設のスタッフも兼ねるケアマネさんが、フェルガードについての質問をしてくれました。彼女は担当者の家族にお渡ししようと、プリントアウトしたフェルガードの資料をバッグに忍ばせていました。コウノメソッドの波が確実に笠間市のケアマネージャーさんに広がっていることを感じます。

 今後は訪問看護師さんやヘルパーさん、ケアマネージャーと言ったコメディカルの方がもっと気軽に認知症の方の対応や治療について相談できるように、気軽な質問タイム(名称未定)の時間や場所を設定することを考えています。チームかさまの皆さん、ぜひ一緒にがんばっていきましょう!
 
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by kasama-hospital | 2013-11-28 04:07 | 認知症・介護

『深い霧が晴れると、そこには荒馬がいた』

 叙情的なタイトルをつけてみましたが、実はこれ、LPCの患者さんのことです。

 LPCと言うのは、レビー小体型・ピック病の混合型認知症の略。河野先生の造語です。
物わかりが悪い私に、患者さんが「まだわからないのか。それならほらまた!」と似た状態を示し、問題提起をして下さいます。しっかり肝に銘じて今度はうまく乗り切れるように、書き留めておきます。

CASE1)
とにかく初回のご本人は眠くて眠くて…。家族からの病歴とCT所見を元にLPCと診断したものの、初回のこの方はレビーが前面に出ており、ピックらしさを感じることはありませんでした。外来でためらいなくニコリン注射を打ったところ、早くも帰りの車の中で多弁に。それだけならまだしも、落ち着きなく何回も家を出て行くようになり、一度は警察まで呼ぶはめに。慌てて抑制薬であるウィンタミンを追加処方。
次の外来でご家族に
「ウィンタミンが出て本当によかった。」
と言われた時には、自分の診療でご家族に別の苦労を与えてしまったことを申し訳なく思いました。

 この方はウィンタミンが出てからも、診察室で座るのに少し時間がかかり、座るとよく意味のわからないことを怒ったような口調で言います。そして!腕組みしながら、よだれを垂らして寝てしまうのです!この姿を見た時には、これぞLPC!!と膝を打ちたくなるほどの衝撃を受けました。

 やはり日中の傾眠が目立つため、ウィンタミンを併用しながら再度ニコリン注射を行うとよい所に落ち着く可能性がありますが、奥様は「わかるんですけど…以前の落着きなさを思うと、もうちょっとだけニコリンは待って下さい。」と言って、ニコリン再トライは保留となっています。家族にこんなトラウマを与えてはいけません。

CASE2)
 前医の精神科でアリセプト5mgが出ていたレビー小体型の方です。

 長谷川式は考える集中力がない様子で全く答えられず、本人も「こんな状態になってしまって…」と非常に戸惑われています。眠いんだから質問に答えられないのはあたりまえなんですよ、必ずよくなりますから、と励まし、アリセプト中止を指示。その日はニコリン注射を打って帰宅としました。幻視に対して処方した抑肝散は、飲むと食欲が落ちるとのことで継続できなかったようです。

次の診察日。意識障害はだいぶ改善し、日中もずっと寝ていた状態から、茶の間で座って過ごすことが多くなったとのこと。しかし同行したお嫁さんは言いにくそうに、

「一長一短…ですかね。」

とおっしゃいました。意識がはっきりし、自分の思いを言葉にしたいのに、語義失語でうまく伝わらない。回りくどい説明になってしまい、それでもうまく伝わらないと、やつあたりのような攻撃的な言動が目立つようになったとのこと。この方もレビーの霧が晴れたらピックが目立つようになったケースです。慌ててウィンタミンを追加し、うまくいけばその時に処方を開始できるかも…と目論んでいたリバスタッチパッチは次回の宿題としました。

以上2症例とも、カルテにはっきりLPCと診断名を書いていたにも関わらず、目の前のレビーらしさに気を取られて、ピックの陽性症状対策をとらなかったことが反省点です。目の前でウツラウツラする方に、心情的には抑制薬を出しにくいのは事実です。しかしピックの陽性症状の強さを考えると、LPCと診断した以上やはり先を見越して対策を立てなくてはいけないようです。最初からほんの少しウィンタミンをかませる、もしくは家族の方に「こんな時には飲ませて下さい」と説明してあらかじめ渡しておく、というのがいいのかもしれません。まだまだ修行が必要です。

写真は、実家のある柏で清水公園を訪れた時のもの。荒馬というにはちょっと迫力不足?
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by kasama-hospital | 2013-11-17 00:53 | 認知症・介護

当院での認知症タイプの割合・待合室ライブラリー

 9月から当院でコウノメソッドによる『もの忘れ外来』を立ち上げ、元々通院や訪問でお付き合いがあった方も含め40人前後の方を診察させて頂きました。まだ2ヶ月しかたっていないとは思えないほど、様々な驚きや気づき、そして喜びを頂いています。はるばる来院される患者さんご本人、付き添って一緒に来て下さるご家族の方、本当にありがとうございます。未熟ではありますが今後も精一杯力を尽くしますので、よろしくお願い申し上げます。

 一つの区切れとして、この2か月で診察した方の、タイプ別の内訳を出してみました。

LPC(レビー・ピック複合)6名 16%
DLB(レビー小体型) 12名 32%
FTLD(前頭側頭葉変性型)9名 22%
ATD(アルツハイマー型)3名 8%
ATD→DLB(アルツハイマーのレビー化)2名 5%
VD(脳梗塞型)1名 3%
タイプ不明 3名 8%
MCI(軽度認知障害)2名 5%

タイプ不明と言うのは、訪問診療などの診察を開始した時点で介護度が非常に高くコミュニケーションを全く取れない状態であり、かつ認知症の発症間もない時期からの経過を詳しく聞ける方が近くにいない、参考となる頭部CTも行えない(訪問診療)方が該当します。

世間一般で言われている「アルツハイマーが半分かそれ以上」という常識?から大きく外れた数字ではあります。しかし私の外来では、歯車様固縮がしっかりあって明らかにレビーという方でも「アルツハイマー型認知症」と診断されていた例が多いので、アルツ5-6割というのは「とりあえずアルツハイマーということにしておけば、半分以上の確率で当たるだろう。他の病名つけたって治療がよくわからないし。」という『とりあえずアルツ病』の方もかなり多く含まれていると思われます。

実際に外来で家族の方から聞いたお話では、一生懸命勉強されたご家族が、

「うちの母親の症状は、(先生の診断された)アルツハイマーではなくレビー小体型だと思うのですが…。」

と主治医に言ってみたところ、

「レビーだとしたって治療は別にない訳ですから…。」

と返されたというエピソードもあり。確かにその後の治療方針が付いてこないのであれば、あえて診断をつける意義は薄いと思われ、アルツだろうとレビーだろうと関係ないと言うことになるのでしょう。現にコウノメソッドを勉強する前の私は、上のように家族に詰め寄られたら、間違いなくドキッとしていましたし、内心戸惑っていました。

 それにしてもレビー小体型とピック、そしてその複合型であるLPCの患者さんは本当に多いです。そしてアルツハイマーは、割合的には少ない。その理由を考えた結果、本当に少ないという事実以外に、2つの仮説が浮かびました。

仮説1)レビー小体型は意識障害や幻視、ピック病は易怒性などのBPSD(記憶力低下以外の症状)が強く、せっぱつまって「病院に連れて行こう!」という流れになりやすい。一方アルツハイマーは発症も進行も緩徐なので、家族もゆっくりとその状態に慣れてゆき、受診のきっかけが掴みにくい。現にずっと拝見していた方でアルツハイマー型だと思われるご家族は、にわか勉強の私の治療の提案に対し、「まぁいい年齢だし、あまり薬などは使わなくていいですよ。」とおっしゃる方もいます。

仮説2)レビー小体型の家族は真面目で一生懸命なので、積極的に受診させる傾向がある。これは後日また別枠で詳しく書きますが、レビーのご家族は本当にまじめです。

 もっと勉強してゆけば、診断は大幅にくつがえる可能性がありますね。今年もあと2か月を切りました。年内に更にレベルアップするべく、勉強を重ねます。

 最後に当院の新たな取り組みのご紹介。以前からやりたいと思っていたのですが、ある方のご好意で大きく背中を押して頂き、実現しました。コウノメソッドに関連する書籍を、待っている方にご紹介し閲覧して頂けるコーナー、名づけて『待合室ライブラリー』です。

 現時点ではライブラリーと呼ぶにはあまりにささやかですが、まずは小さくても第一歩を踏み出してみることから。体調に余裕があり、待ち時間を持て余している方が、少しでも情報を得られるチャンスになればと願っています。来院された際には、ぜひご利用下さい。DVDの貸し出しも開始します。今後掲示板でのコウノメソッド紹介や、書籍の充実という形で発展させていければと考えています。

 それでは今日はこのあたりで。素敵な週末をお過ごし下さい。
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by kasama-hospital | 2013-11-09 02:10 | 認知症・介護

見極めは難しいけれど。

 それまでは元気なご主人のリードで自宅で過ごされていた御年90ウン歳の女性患者Sさん。大腿骨骨折で手術をし、一応は歩けるようになったものの、歩行はいくらか不安定。なかなかの認知症(アルツハイマー型だが時々幻視も出現しレビー化しつつある)もある。真面目な娘さんは、「このままでは歩行も完全ではなくまた転ぶ危険があるから、リハビリ施設に移って何か月かリハビリをし、きちんと歩けるようになってから家に帰った方がいいのかしら?」と考えた。リハビリ施設はすぐには空かないので、数ヶ月から半年は待たないと入れない。環境を整えるために当院に転院となった。

 総合的に考えると、この方はリハビリ施設を経るより早めに在宅に戻った方がいいのでは…と考え、私個人の一意見としてご家族にお話をした。

 十分に歩けないから歩けるようにトレーニングをしよう、という発想そのものは素直で真っ当である。でもこれは、残された時間が十分にあって、身体能力に予備力がある若い人の考え方のように思う。身体能力が脆弱であれば、一生懸命リハビリをしても、今後絶対に転ばないとは言えない。そして平均年齢を軽くオーバーしたSさんに残されたお時間は、長くても数年。そのうちの貴重な半年を、施設待ちの入院や施設でのリハビリに費やすのはいかがなものか。本人も「早く家に帰りたいねぇ。」と言っており、高齢ではあるがしっかりしている旦那さんも、もう一度家で面倒を見てあげたいと言っている。あるかないか分からない(とは直接言わなかったが)数年後よりも、目の前のSさんの生活の質を高める方向で考えた方が幸せにつながるのではないか…。

 ご家族とこんな相談をしているうちに、入院中のSさんが歩き始めた。看護師が付き添って歩行リハビリを…ではなく、なんと自主練である。看護師さんが病室に行ったところ、数メートル離れた隣りのベッドの脇のサイドテーブルをゴソゴソいじっていたのだそうで。本人いわく探し物をしていたようだが、この先当院から更に別のリハビリ施設に移り、環境が再び大きく変われば、Sさんが混乱して認知症が進む危険性も高い。

 このエピソードが決め手となり、Sさんは直接家に戻ることになった。Sさんが生活しやすいように自宅の介護環境を整え、訪問看護や訪問リハビリを導入して。退院後初めての訪問では、日の当たる廊下に歩行介助バーが何本も設置されており、そこをつたって行くと自力でトイレまで行けるようになっていた。ご主人が設置したのだと言う。茶の間では、コタツの指定席に座ってニコニコ笑うSさんの姿があった。あと何年この生活が続くかわからないが、少なくても今の段階ではご家族もこれでよかったと言って下さっている。

 一方で、先日ブログでご紹介したレビー小体型の患者さんのように、治療を行うことで状態が劇的に良くなり、診療内容の選択肢が増える方もいるのも事実。

『主よ、変えられないものを受け入れる心の静けさと 

 変えられるものを変える勇気と

その両者を見分ける英知を我に与え給え。』

上の一文を読んだ時、まさに高齢者医療そのものだと思った。自然な身体の衰えを加齢変化として受け入れ共存していくゆるさや穏やかさも必要。一方で医療者には、何でもかんでも「年のせい」にして診療の質を上げる努力を怠ってはいないかという自問も必要。その両者の見極めは、なかなかに高度。永遠に修行が必要です。

写真は、関係ないけど『インフルエンザ予防接種始まっています』
(患者さんの許可を頂いて掲載させて頂きます。)
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by kasama-hospital | 2013-11-07 07:17 | 認知症・介護

今日も張り切って診療中


by kasama-hospital

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