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グラム染色修行(その1)

こんにちは。白土です。今日は、検査についてのお話です。

グラム染色、という検査があります。肺炎や尿路感染と言った感染症で、痰や尿を特殊な色素で染めることで、顕微鏡で原因となっている細菌を見つけるという手技です。

通常それらの検体は培養に出すのですが、結果が返ってくるのが早くて数日後と時間的な遅れが出てしまうこと、正確な病状を反映していない結果が返ってくることもあり、誤った治療に結びついてしまうこともあり、解釈には注意が必要です。青木眞先生の『レジデントのための感染症診療マニュアル』という教科書(この教科書を読んで感染症に進みたいという若手医師がいるほど影響力の大きな良書です)にも、『可能な限り自分で染色し自分で顕鏡する』と書かれ、その重要性が強調されています。

グラム染色には、大型の機械などの高価な設備や多くのマンパワーは必要としません。低コストで一人でもできるという意味では、うちのような小さな病院でもすぐにでも始められます。顕微鏡と染色液、スキルと知識があれば…。そう、このスキルと知識が最大の問題。

ちなみに総合病院などのある程度の大きさの病院となると、専門の検査技師さんがいて、グラム染色をオーダーすると電話で結果を教えてくれます。大きな病院にいた頃の私は、技師さんが教えてくれる結果をふんふんと聞いて

「グラム陽性球菌がメインで白血球貪食像も見られる…。そうですか。ありがとうございます!」

と分かったような気になってやり過ごしていたのです。本当はこれでは全然わかっていないのですが。

うちの病院にも皮膚科の先生が使われるため顕微鏡はありますが、つい数か月前までグラム染色は行っていませんでした。
ぜひうちの病院でもグラム染色を!と一念発起して院長の許可を頂いたものの、何から始めればよいのかさっっぱり。まずは物品でも揃えてみようと、インターネットで必要な物をリストアップして、検査技師の岡安さんに注文してもらいました。昔々に試みたことがはあるようで(数回でやらなくなったと聞いております)棚の奥に古い染色液が残っていましたが、期限はとっくに切れていました。数週間後に(なぜか結構時間がかかった)ようやく物品が揃い、やはりネットで引っ張ってきた手順に従い、岡安さんと恐る恐るまずはトライ。

やっているうちに、どうやらこれ、学生時代にやったような…とおぼろげな記憶がよみがえってきました。岡安さんも「多分…私もやっています。」と。微生物などの実習でやっていない訳がないのです。非常に基本的かつ重要な手技ですから。にも関わらず、2人そろって具体的な内容をつゆほども覚えていないとは情けない…ダメ学生ですね。(指導して下さった先生方、ごめんなさい!)やはり目の前に患者さんがいて、明日の診療ですぐにでも使うぞ、という切迫した状況でないと、なかなか身に付かないと言うことでしょうか。

さて、栄えある1回目のトライは、懸念通り大失敗でした。手順通りやったのに、何にも見えてこない…。何がダメなのかもわかりません。検体が悪いのか、染色の手技が悪いのか、顕微鏡の扱いに問題があるのか、はたまた目と頭が悪いのか。う~ん…。早速行き詰ってしまいました。  (つづく)
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by kasama-hospital | 2011-10-16 00:36 | グラム染色

グラム染色修行(その2)

途方に暮れた私が泣きついた先は、研修医時代からお世話になっている、県立中央病院の臨床検査室です。お世話になっているとは言うものの、中央病院にいた当時はろくろく検査室に足を運んだこともなく、技師さんともほぼ初対面。単に病院そのものに馴染みがあるというだけで研修日に押しかけてしまったのです。技師さんだって普段の業務がお忙しいでしょうし、おまけに今や私は完全な部外者だと言うのに!中央病院の技師さんは、比較的業務が落ち着いている午後を指定され、後日数時間かけて丁寧に手技のレクチャーをして下さったのです。何て親切な方がいるものだと、大げさではなく胸が熱くなりました。
 技師の粟野さんと関さん(お2人ともチャーミングな女性です♪)は、内心あきれていたに違いありません。私の知識の乏しさに。

「あの…青が陽性でしたっけ?陰性でしたっけ?」(信号で青だから(+)と今は覚えました♪)

「顕微鏡は…レンズを最初に近づけて見ながら離していくんでしたっけ?」

レクチャーを乞うのが失礼なほど素人くさい質問を終始連発してしまいましたが、粟野さんは笑うことも怒ることもなく、優しく答えて下さり、一緒に染色もやらせて下さいました。

お陰で、うちの病院の顕微鏡は今コンデンサが下がっているのではないか(皮膚科の先生が使われている場合、下がっていることが多い)、そして1000倍の強拡大には油浸レンズが必要だという衝撃の事実(!)も判明し、どうやらその2つが敗因ではないかと明らかになったのです。いやもう、そんなことも知らないで始めようとしていたのか、と赤面ものですが(今日ここに記事を載せて更に恥の上塗り)聞くは一時の恥です。

 そして意気揚々と病院に戻って油浸レンズを待つことウン週間(何でこんなに時間がかかるんだ…)待望の油浸レンズが到着。コンデンサもばっちり上げて、セカンドトライ。染色で待つ時間ももどかしく、見てみると…見えた~~!!!県立中央病院検査室様様です。

 これにすっかり気をよくして、うちの病院ではグラム染色が本格的にスタートしました。院内で勉強会も開かれ、自分なりに教科書を読んで、ばっちり♪かと思いきや、なんだか痒い所に手が届かない…。
いや、すっきりとクリアな時もあるのです。臨床的な背景と目の前の細菌が矛盾なくかみ合い、岡安さんと「今日はうまく行ったね!」と言い合える時、抗生剤開始数日後の染色で白血球も細菌も見られなくなって、確かに効いているという実感を持てる時も。ただ、細菌感染が疑われるのに菌が認められないこと、白血球はワサワサいるのに菌がいない…ということもあって、解釈がうまく出来ないことも。教科書な知識と現場をつなぐ、もう少し実践的なレクチャーが欲しい…。
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by kasama-hospital | 2011-10-16 00:35 | グラム染色

グラム染色修行 (その3)

そんな時なのです。中央病院の技師、関さんが10月14日の夕方にグラム染色の講演があるからと声をかけて下さったのは。まさに神の思し召し!絶対に出席しますとお返事。

関さんからは、その翌日(土曜日)の日中にも同じ先生が実践で教えて下さるとお誘いを頂き非常に心ひかれたのですが、さすがに2日連続は…。14日にも疲れ切った夫に夕方の子守をお願いするので、翌日まで子守を押し付けるのは忍びないと、こちらは事前にお断りしていました。

14日当日、AIORCOID代表 相原雅典先生の講演を受け、目からうろこがボロボロぼろぼろ。
相原先生は、冒頭から、よくあるグラム染色レポート(GPC2+…と形態と数を羅列しているレポート)を
「臨床医の知りたいことに全く答えていない!」

とバッサリ切り捨て。私、ここで完全に引き込まれました。あのレポートを見てさっぱりピンとこなかったのは、私の知識不足だとばかり思っていましたが(それは大いにありますが…)それだけじゃなかったんだ! そして痰を水道水で洗うということにも衝撃!スライドを見るポイントなどもクリアカットで、今までの自分のグラム染色の見方(細菌はどこだ細菌…とひたすら細菌を探す)が180度変わりました。加えて、先生の感染症にかける情熱というのが言葉のはしばしからビンビンと伝わってきて、その姿勢にも感動…。

翌日の実践編、出ないでは修行が完成しない…。という訳で、夫にひたすらお願い。
「え~!翌日は出ないからって言ってなかった?」
と不機嫌そうだった夫も、最終的には
「勉強したい時が一番吸収できる時だからね。行ってきなよ。」
と言ってくれ、めでたく2日目にも出席。旦那さん、ありがとう…。10月の週末はずっと子守します。

 2日目も、本当に楽しくて楽しくて。痰を洗う手技、ハッカー法での染色などを実際に教えて頂きやってみました。技師さんも入れて10人ほどのこじんまりとした集まりだったので、途中でバンバン質問も出来て、大満足です。最後は出来上がったスライドを見ながらお話。
研修医の先生が自分の患者さんの痰を持参して、ノーヒントで先生が見ます。

先生「慢性の気道炎症があって…好中球と好酸球が9:1くらいで好酸球がちょっと目立つから、アレルギーの要素もある。最近が膨化してるから抗生剤が使われてた。細菌は…グラム陰性菌がいる。緑膿菌かな?」

後からどんな患者さんか聞くと、先天性の疾患があって気道感染をくり返しており、何回か緑膿菌も出ている、抗生剤も数日前まで使っていたが、薬疹(アレルギー)でやめた、とのこと。ゾゾッとしました。あたり過ぎて、怖い。切れ者の検事が現場検証を行って犯人を絞り込んでいく様子そのもの。たった一枚のスライドで、これだけ多くのことがわかるのか、と鳥肌が立ちます。グラム染色、恐るべし。匠の技に少しでも近づけるように、明日から頑張ろう、と知識と元気を頂いた2日間でした。

 感動しすぎでボーっとしてしまい、歩いて家まで帰ってしまい、夫に
「車どうしたの?」
と聞かれて初めて車で行っていたことに気が付くというボケっぷり。
県中の技師さん方、先生、本当に本当にありがとうございました!
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by kasama-hospital | 2011-10-16 00:34 | グラム染色

今日も張り切って診療中


by kasama-hospital

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