カテゴリ:プライマリケア( 3 )

手洗いをすればするほど○○になる

 先日、院内の職員を対象とした『手洗い実習』(?)が行われました。この実習では、あらかじめ両手に蛍光塗料の入ったクリームを塗りこんだ上で、各自手洗いをします。その手をブラックライトの下にかざすと、クリームが残っている部分が光って洗い残しを教えてくれるというもの。
‘いつも通りに’手を洗うよう指示されましたが、私は普段より懇切丁寧に、しつこくしつこく手を洗いました。いつもの3倍くらいの時間をかけて。これでどうだ!とライトの下に手をかざしたところ…。

 おおむね綺麗で洗い残しがなかったのですが、一か所だけピカ~ッと光る場所がありました。それは…手荒れがひどい部分だったのです。試しにもう一度そこの部分を重点的にこすり洗いをして(傷にしみてものすごく痛かった…)再チャレンジしましたが、やはり完全には落としきれませんでした。
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 この実習の私的教訓。それは「もっとしっかり手洗いしましょう!」ではなく…「手荒れはやっぱりしちゃいかん。」です。手荒れして溝が深くなったり亀裂が入ったりした皮膚は、その凹凸ゆえにどんなに頑張って手洗いしても、きれいに洗うことが出来ません。つまり細菌の絶好の隠れ家になる訳です。

 ここで皮肉なのが「頻ぱんに手洗いをするほど、手荒れしやすい」ということ。石鹸で手を洗うと、皮膚の汚れのみならず皮膚を守る作用がある皮脂(油分)も落としてしまいます。感染予防のためにとせっせと一日何度も手を洗った結果『手洗いをすればするほど清潔になる』どころか『手洗いをすればするほど院内感染源になる』という残念な結果になりかねません。

 実際に手荒れをしている手からは、していない手に比べてMRSA(抗生物質に抵抗力を持つ黄色ブドウ球菌)が多く検出されたという実験結果もあります。『さらば消毒とガーゼ』という本の中では「荒廃した皮膚においては常在菌である表皮ブドウ球菌が棲めない環境になり、より湿潤な状態で棲息する黄色ブドウ球菌が繁殖しやすい状態になるため」と説明されています。

 何とかの一つ覚えのように手洗い消毒!と叫ぶのではなく、どの場面ではすべきでどの場面はスルーした方がよいのか、選択をする必要がありそうですね。同時に、手荒れ対策としてのハンドケアも、感染予防の観点から必須です。ハンドケアについては、また今度。
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by kasama-hospital | 2014-11-27 19:20 | プライマリケア

ヨードうがいはダメです!

 あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願い致します。

 さて、寒さと共に流行ってくる急性上気道炎。このシーズンには、

「かぜを引かないように、うがい薬を下さい!」
「かぜで喉が痛いので、うがい薬を下さい。」

と言ってこられる患者さんがいらっしゃいます。まじめな中年女性が多いでしょうか。生活をきちんと管理しようという心がけは素晴らしいのですが、実は大きな落とし穴が。

 どんなうがい薬をイメージしているのか聞くと、「茶色くて臭い…」ヨードうがい液(イソジンうがい液)のことが圧倒的に多いです。あたりまえのように使われているこのうがい液ですが、実は風邪の予防には効果がない(むしろ逆効果)だと言われています。

 2002-2003年に京都保健管理センターのグループが行った研究で、「ヨード液うがいをする群」「水でうがいをした群」「うがいをしない群」に分け、風邪の発症率を比べたデータがあります。これによると、最もかぜを引きにくかったのは、水うがい群でした。河村教授は「水の乱流によって、ウィルスそのものやプロテアーゼ(ほこりの中にありウィルスにかかりやすくする)が洗い流されること、また水道水に含まれる塩素がが効果を発揮したと考えられる。」と述べています。一方ヨードうがいで効果が低かった理由としては、ヨードが殺菌効果と共に人間の細胞にも障害をもたらし粘膜が荒れることで、風邪ウィルスの侵入を容易にしている、と言われています。(引用)http://www.kyoto-u.ac.jp/health/006.htm

 予防として使う正常粘膜でさえこの結果ですから、実際に風邪を引いてヒリヒリ喉が痛い時、つまり傷んだ粘膜への細胞障害性は更に大きいことが予想されます。喉が痛いからせっせとうがいをしていることが、ますます治りを悪くする結果となっているのですね。この研究結果、臨床に即していて非常に興味深いと思うのですが、医療機関でヨードうがい液を出される方は多いということは、医療関係者にさえ浸透していないということで残念です。日常に役立つ大切な知識なので、せっせとヨードうがい液をしている真面目なご家族や友人にぜひ教えてあげて下さい。

 最近かなり広がりを見せている「うるおい治療」という傷の治療があります。傷は乾燥させるのではなくしっとり湿らせた状態を保った方が傷の再生を促されるという理論です。この治療の提唱者である夏井 睦先生は、それまで常識とされていた傷のイソジン消毒にも異を唱えており、こちらもうるおい治療の一環として広がりを見せています。私も診療上この理論に従って傷の管理をしていますが、処置に痛みを伴わず綺麗に治ることが多いので患者さんに喜ばれます。傷の治療とうがい、一見関係がなさそうですが、実はダメージを受けた皮膚と粘膜を消毒液にさらすという点では問題は一緒ですね。

 外来であたりまえのようにヨードうがい液を求める方には、上のような説明を(外来は非常に混んでいるのでかなりはしょって簡単に)行い、基本的には水か塩水、緑茶や紅茶によるうがいで十分。どうしてもうがい液を使ってうがいをしたい!とお薬が大好きな方には、創傷治癒効果があると言われているアズノールうがい液を出しています。
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by kasama-hospital | 2014-01-06 06:14 | プライマリケア

ポートフォリオ

ポートフォリオ(portfolio)という言葉を、少し前に知りました。

 本来の意味は「紙ばさみ」それが転じて「画家・写真家などが自分の作品を整理してまとめたもの」のこともポートフォリオと呼びます。この言葉、色々な業界で色々な意味合いで使われていますが、教育の場で使われるポートフォリオとは、「自らの成果や得られた情報を一元化したもの」を指します。そのようなものを記録としてまとめる過程も含めて、学習の振り返り・評価ツールとして使おうと言うのです。

先日、院内の勉強会で石塚先生がこのポートフォリオを取り上げ、スタッフそれぞれがポートフォリオを作ることを提案されていました。

 感化されやすい私は、その日のうちにポートフォリオのファイルを作成しました!形から入る典型例だと笑われるかもしれません。でも受験勉強と違い、医者としての勉強は、ここまでやれば合格、という明確な範囲もなければ、試験日のようなゴールとなる期限設定もありません。医師のみならず社会人の方の多くの実地勉強は同じではないかと思います。日々の業務を行いそれに関連した勉強をしながらも、自分が本当に前に進んでいるのかな、こんなに年数を経ているのに、自分はこれでいいんだろうか、と漠然とした不安を感じることはないでしょうか?(私だけ?)焦りが原動力となる面もあるのでそれはそれでいいのですが、時々その不安に押しつぶされそうになることも。時には
「大丈夫。あれもこれも昨年は知らなかったし出来なかったことなんだから、確かに君は昨年よりも進歩している!」
と自分の肩を叩いて励ましてあげたくなることもあるのです。ポートフォリオなら、その役目にも打ってつけ。社会人の勉強の必須アイテムではないかとさえ思えてきました。

 扱う疾患が多い総合診療の性質上、興味や関心、学んだ知識があっちに行ったりこっちに行ったりする、頭の中の交通整理にも役立ちそうです。実際に私、こっちの勉強をして成果をまとめている途中で他に調べなくてはいけないことが出てきて、そっちをやっているうちに前にまとめていた資料がどこかに行っちゃった…教科書もどこまで読んだんだっけ…ということがよくあります。

作り方は非常にシンプル。透明のポケットが沢山ついたクリアファイルに、その日自分が調べたり勉強した内容のコピー、などを時系列で入れていきます。

私はこのファイルに入れる用のプリントも、エクセルで手作りしました。

タイトル欄に勉強したいテーマを書き込み、
(1)ビジョン(どんな状態を目指してこの勉強をしているのか)
(2)そのためにインプットする情報(読む予定の教科書や論文をリストに載せる)
(3)学んだことをどのようにアウトプットするか(診療へのフィードバック、院内での勉強会や患者さん向けのプリント作成など)

という流れに沿って計画をたて、達成したらチェック☑していくことで、テーマ別の進行表の役割を果たしてもらおうという狙いです。

 このポートフォリオ、情報をファイルにためていくことだけが目的なのではなく、メンター(指導者)と一緒に作成して経過を見守ってもらうというのが本来のやり方のようです。今日、一方的にメンター指名した方にお願いにしに行き、快く引き受けて頂きました。口ばっかりで行動が伴っていないと思われると恥ずかしいので、書いたことはきちんと実行していきたいと思います。

 これまで何となくモヤモヤしていた問題が、納まるところに納まったような、すっきりした気持ち♪今日からまた前向きにがんばっていきます。よい機会を与えて下さった石塚先生、ありがとうございます。
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by kasama-hospital | 2013-04-24 00:11 | プライマリケア

今日も張り切って診療中


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