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アリとキリギリス

 先日読んだ『抱きしめられたかったあなたへ』(三砂ちづる)という本で心惹かれた箇所。

 ブラジルに住んでいた作者が子供たちに読み聞かせた絵本『アリとキリギリス』。ストーリーは万国共通、かと思いきやブラジルの絵本では趣が少しだけ違う。
 夏の間楽しく歌っていたキリギリスが、冬に食べ物がなくなりアリに助けを求める場面。

『アリ 「私が働いていた時、あなたは何をしていたのよ?」
キリギリス「人生の美しさ、友情と、すべての虫の連帯の美しさを歌っていたの。私の歌は子供たちを幸せにして、恋する若者たちの心を燃え立たせたわ。」
それを聞いたアリは、はっとしてキリギリスへの非礼を詫びました。
「ああ、私は自分のことばかりにかかりきりになっていた。あなたはそうやって皆を喜ばせていたのね…」
アリはキリギリスを温かく迎え入れおいしい食事を振る舞い、冬じゅう2匹は友情の美しさをたたえて、踊り暮らしましたとさ。
人生は美しいこと。そして美しいと感じられる時に楽しむこと。「備えよ常に」で今を楽しまず、明日のことを思い悩むアリは、自分のことしか考えないエゴイストと見なされ尊敬される存在ではないようです。…ここでは最後に変革を経験しているのはアリの方なのです。』

なかなか面白いと思いませんか?私が以前目にしたものでは、アリが冷たくバタンとドアを閉めてキリギリスが野垂れ死にするというストーリーもあったような。そこまで冷血でなくても、軽く嫌味を言って恩着せがましく食べ物を分けてあげるという、ちょっと説教くさいお話だった気がします。ところがブラジル人にかかれば、反省すべきはアリ!?

国民性も色濃く反映されているのでしょう。私たち日本人は、「コツコツと頑張ったり」「今は少し我慢して将来に備えたり」を美徳とする真面目な国民です。今の豊かな日本はそう言った勤勉さの上に成り立っていることは間違いないのですが、それも行き過ぎると、「今貧しかったり困っているのは本人の努力が足りないせい」と切り捨てる冷たさに結び付きそうな気も。一方ブラジルの人たちは、音楽家、歌手、スポーツ選手など「人を喜ばせることができる人たち」への心からの尊敬を惜しまないのだそうです。そういう意味では、夏のキリギリスは十分に豊かな役割を果たしているんですね。目から鱗、思いもしなかった新たな視点を与えられて少し嬉しくなりました。

 実は私、この話を聞いて医学部時代に親しくしていた女友達との関係を思い出したのです。とにかく楽しかった学生時代、そこに大きく貢献してくれた、と言うより私を新しい世界に引っ張って行ってくれたのが、同級生の彼女でした。AMSA(アジア医学生会議)での日本と世界を駆けまわるような活動、プライベートでの数々の旅行(そしていっぱいの喧嘩)は、私にとってかけがえのない経験と素敵な仲間をもたらしてくれました。彼女は人を動かすのがとっても上手で、決して「新しいことを教えてあげる」なんて上から目線な態度は取らないのです。思慮深い作戦なのか天性のものなのか(多分後者)。彼女は「行動してから考えよう」というタイプなので、思いついたアイディアを先に威勢よく打ち上げて周囲を盛り上げ、いよいよ状況が動き出してから「人が足りない~助けて~」と助けを求めてくる。テストも近いしそういうの困るのよね…と思いながらも、本当に困っていそうで断りにくいし、何より張本人の彼女がすごく楽しそうだし…ということでまんまと彼女の思惑にはまり、次から次へと色んな事件(?)に巻き込まれていきました。今になって振り返れば、どれもこれも得難い経験だった。人生を楽しむ才能という意味で、彼女はまさしくキリギリスタイプです。

 学生時代の私は、どちらかと言うとアリタイプでした。ここだけの話、医学の勉強に打ち込みたい!という熱い思いと言うよりも、北口デビュー(うちの大学では、テストに落ちると北口の学生掲示板に番号が張り出されるので初めてテストに落ちることをこう呼びます)したくない!という小心さゆえの行動だったのですが。そんな訳でまあまあ真面目に講義に出てはメモを取ったり、早めにテスト勉強に着手していたのです。
 今思うと、私たちは和解した後のアリとキリギリスみたいな関係だったなぁと思います。彼女は本当にテスト直前に(数日前とか、本当に直前)プリントコピーさせて…と部屋を訪ねてきました。貸すのはいいけどどう考えても時間足りないんじゃ…というくらい切羽詰まったタイミングで。ドアの前に立つ彼女に、国内や海外の学生を前に堂々とスピーチしていた時のまばゆいばかりの輝きはありません。

自分の名誉のために言うと、私は童話のアリのように

「いっぱい時間があったのに、いったい何をしていたの?勉強しなかったの?」

なんて彼女に聞いたことはありません。何かと忙しくて勉強なんてちっともしてなかったのはよくわかっていますから。彼女が日頃、私の学生生活をどれだけ彩豊かなものにしてくれているかを考えれば、テスト前のプリントコピーではお釣りが来るほどです。

色んな気質の人がいてこそうまく回っていくんですよね。みんながキリギリスだったら冬に全員飢え死にしているし、みんながアリだったら随分とつまらない世の中になるでしょう+。互いの特性を生かして助け合っていけばいいよね。今回そんな風に再認識したのです。

 大学卒業に際して、6年間の最高の経験をありがとう、と彼女に言いたかったけれど、何だか照れくさくてうまく言えないままここまで来てしまったので、ここでこっそりと言わせてもらいます。本当にどうもありがとう。感謝の意を示すどころか名誉棄損で訴えられそうですが、これからも、体を張って私に新しい世界を見せて下さい。よろしくお願いします。

写真は家族で訪れた宮古島のもの。宮古ブルーと呼ばれる真っ青な海に心を奪われました。
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by kasama-hospital | 2013-08-03 14:14

今日も張り切って診療中


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