コウノメソッドを開始します (1)

こんにちは。すっかりご無沙汰しています。

この数ヶ月間、ブログもアップせずに何をしていたかと言うと…実はまじめに勉強をしていました。認知症の診療について。『コウノメソッド』と言われる、名古屋の河野和彦先生が提唱される認知症診療をマスターしようと一人奮闘していたのです。

私と河野先生の出会いは、一冊の本から始まりました。

『認知症診療 28の満足』
e0320283_184646.jpg

数ヶ月前に本屋さんで手に取って、イラストも可愛くわかりやすそう♪と気軽な気持ちで買って帰りました。高齢の患者さんが多い当院は認知症患者さんも多いため、ご家族に病気についてわかりやすく説明できたら…とさらっと読み流すつもりだったのです。ところがところが、衝撃的でした。一言で言うと、「認知症症状は、かなり改善する」という内容でした。あまりの衝撃に、一時的に頭がフリーズしてしまい、一端本を閉じてしまいました。
「こんな先生にかかれる認知症患者さんは幸せだな。」
と感じたことは覚えていますが、彼我の差が大きすぎて、とても一医師として同じ土俵に立てる気がしませんでした。

 長いこと私にとっての認知症は‘介護・福祉の領域’に位置していたと認めざるを得ません。城里町の診療所時代には介護保険の認定審査員を務めさせて頂いたこともあり、主治医意見書はきちんと書こう、介護の面で患者さんをきちんとサポートしようと努めていたのは事実ですが、医療に関しては…。散発的にアリセプトを処方するも、「劇的に改善した!」という手ごたえはあまり感じられず、「アリセプトは進行を9か月遅らせるだけ」という言葉を鵜呑みにして、あまり積極的に処方もしてこなかったのは事実です。

 規模の大きな総合病院においては、認知症と言うのは、‘望ましくない背景の一つ’という扱いになりやすい気がします。つまり各科の専門的、積極的な治療(手術や抗がん剤など)を出来ない理由の一つ(「認知症が進んでいるから治療の積極的な適応はないね。」と言う風に)であって、診療の主役として認知症そのものときちんと向かい合おう、という風になかなかならないのです。一方で患者さんとご家族からすれば、認知症こそが「日常」であり、背景などではなく日々の暮らしの主体(日常生活に大きな影響を及ぼすという意味で)なのです。つまり、この診療の質によって、患者さんの日常が大きく変わる。そしてそれに振り回されるご家族の生活の質も。

 「遅い!」と患者さんと家族に叱咤されて当然ですが、鈍い私は医師10年目にしてそのことに気づきました。町医者として生きていくからには、日常疾患である認知症と真正面から向き合おうと覚悟を決めたのです。そして何冊かの認知症についての教科書を読んだ上で、改めて河野先生の提唱する『コウノメソッド』に帰ってきました。
 ずいぶんと回り道をした分、この先生の凄さがよくわかります。理論が非常に明快でわかりやすい。現場で自分の目で発見した事実ばかり(「全て患者さんから教わりました」とおっしゃっています。)なので、抽象的な理論で臨床医を煙に巻いて「で、結局何を処方すればいいわけ?」と言いたくなるようなことは一切ありません。わかりやすいのに、奥が深い。薬を処方して患者さんを観察してあ~でもないこ~でもない…と考える先生の思考過程がブログに綴られています。こんな偉い先生でも地道に試行錯誤を繰り返しながら経験を積んでいるのなら、ひたすら目の前の患者さんを一生懸命診療して、自分の頭で考える努力をすれば、自分にも何か新しい事実のカケラが見つけられるんじゃないかな。不遜にもそんな風に思わされてしまう魅力があるのです。 (つづく)
[PR]
by kasama-hospital | 2013-07-09 18:47 | 認知症・介護

今日も張り切って診療中


by kasama-hospital

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

ブログジャンル